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スパイの使う暗号が読めないってんならともかく・・・、バカバカしいぜ。ただ汚いって理由で読めないなんて。
どうしよう・・・。
その時、俺の隣に誰かがストンと腰を下ろし、俺はびっくりして飛び上がった。慌てて顔を上げたら、大きなアーモンド型の目が、ばっちり俺を見つめていた。
暗やみ団地のピーチだ。
[ピーチ]
サイクロン先生、お悩み?
助けてあげましょうか?
[俺]
断る。
助けるかわりに何かしてくれって、そう言うんだろ。ヘルズ・スクエアのガキどもときたら・・・まあ、俺もそのガキなワケだけど・・・本当にチャッカリしてやがるんだ。
そうやって力を借りてさ、また借りを返して・・・なんてやってたら、俺は一生、このろくでもない島にカンヅメになっちまうよ。
[ピーチ]
あんたも島を出たいの?
[俺]
いつかはな。でも、今はそれどころじゃねえんだ。ワイルド・キャットの宝物を探しださなきゃ。
だけど、何を捜したらいいのかわかんねえ。
十回眺めても、百回眺めても、同じだぜ。それで解るくらいなら、最初から解るもんな。
[ピーチ]
エンピツって書いてあるのよ。
[俺]
なんとエンピツかよ。なるほど・・・って、オイオイ、待てよ、待ってくれ。
ヘルズ・スクエア中から、エンピツ一本探し出せってか?台風の後で?冗談じゃないぜ。困るよ、そんなの。できるか!
なあ、他にエンピツが無いわけじゃないだろ。ヘル・マーケットにだって落ちてるだろうし、本土から買ってもいい。「エッグの花」の観光収入のお陰で、ヘルズ・スクエアには、僅かながら収入もあるんだしよ。
[ピーチ]
他のエンピツじゃダメなのよ。ワイルド・キャットのエンピツは特別な物だから。
[俺]
どんなヤツなんだ?
[ピーチ]
長さは中指くらいかな。ヘル・マーケット(ゴミ捨て場)で拾ったヤツで、けっこう使い込んであったから、芯はグラグラ。緑色なんだけど、その塗りも剥げてたし。
[俺]
ボロ屑じゃねえか。
それにしても、お前、ずいぶんと詳しいな。
[ピーチ]
ワイルド・キャットは、そのエンピツに、特別な思い入れがあるのよ。
[俺]
どんな?
[ピーチ]
秘密。
[俺]
事情を聞いてもいけないのかよ。
[ピーチ]
リストの次は?
[俺]
まだそこまでいってねえよ。トロくて悪かったな。
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