ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅢ~サイクロンのお話

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 スパイの使う暗号が読めないってんならともかく・・・、バカバカしいぜ。ただ汚いって理由で読めないなんて。  どうしよう・・・。  その時、俺の隣に誰かがストンと腰を下ろし、俺はびっくりして飛び上がった。慌てて顔を上げたら、大きなアーモンド型の目が、ばっちり俺を見つめていた。  暗やみ団地のピーチだ。 [ピーチ]  サイクロン先生、お悩み?  助けてあげましょうか? [俺]  断る。  助けるかわりに何かしてくれって、そう言うんだろ。ヘルズ・スクエアのガキどもときたら・・・まあ、俺もそのガキなワケだけど・・・本当にチャッカリしてやがるんだ。  そうやって力を借りてさ、また借りを返して・・・なんてやってたら、俺は一生、このろくでもない島にカンヅメになっちまうよ。 [ピーチ]  あんたも島を出たいの? [俺]  いつかはな。でも、今はそれどころじゃねえんだ。ワイルド・キャットの宝物を探しださなきゃ。  だけど、何を捜したらいいのかわかんねえ。  十回眺めても、百回眺めても、同じだぜ。それで解るくらいなら、最初から解るもんな。 [ピーチ]  エンピツって書いてあるのよ。 [俺]  なんとエンピツかよ。なるほど・・・って、オイオイ、待てよ、待ってくれ。  ヘルズ・スクエア中から、エンピツ一本探し出せってか?台風の後で?冗談じゃないぜ。困るよ、そんなの。できるか!  なあ、他にエンピツが無いわけじゃないだろ。ヘル・マーケットにだって落ちてるだろうし、本土から買ってもいい。「エッグの花」の観光収入のお陰で、ヘルズ・スクエアには、僅かながら収入もあるんだしよ。 [ピーチ]  他のエンピツじゃダメなのよ。ワイルド・キャットのエンピツは特別な物だから。 [俺]  どんなヤツなんだ? [ピーチ]  長さは中指くらいかな。ヘル・マーケット(ゴミ捨て場)で拾ったヤツで、けっこう使い込んであったから、芯はグラグラ。緑色なんだけど、その塗りも剥げてたし。 [俺]  ボロ屑じゃねえか。  それにしても、お前、ずいぶんと詳しいな。 [ピーチ]  ワイルド・キャットは、そのエンピツに、特別な思い入れがあるのよ。 [俺]  どんな? [ピーチ]  秘密。 [俺]  事情を聞いてもいけないのかよ。 [ピーチ]  リストの次は? [俺]  まだそこまでいってねえよ。トロくて悪かったな。
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