ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅢ~サイクロンのお話

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1・   俺の名前はサイクロン。十六歳。ホープ島はヘルズ・スクエアで暮らしてる。もうしばらくは、ここにいるだろ。  本当はさ、十五歳でこの島を出ていくつもりだったんだ。マッシュと二人で。生まれてからずっと一緒だった。あいつと離れる日がくるなんて、思ってもみなかった。  それなのに、マッシュは一人で島を出た。俺を置き去りにしてさ。自分一人の力で生きていけるかやってみたいって、そう言ってた。自立するんだそうだ。エッグの様にな。  エッグなんてヤツ、俺は苦手だ。  頭はいい。確かにそれは認める。俺と同じ年だとは思えないくらい大人びてて、何でもできて。だけど、あの澄ましかえった口調、落ち着き払ってばっかりで、謎かけみたいなことばっかり喋るんだ。もうちょっと普通に話せばいいのに、気取ってさ。他の奴も自分と同じくらい賢いとでも、普通に思ってるみたいだ。  一年前、あいつが島を出て行って、ヤレヤレ思ったもんだ。これで、マッシュの親友は、やっと俺一人になるんだって。やっと邪魔なヤツがいなくなって、マッシュと二人で、色々と楽しめるかと思ったのに。  今度は、マッシュが出ていくなんてあんまりじゃないか。そんなのありかよ?  俺は大泣きして止めたよ。独力でってとこに、そんなにこだわらなくたっていいじゃないか。一人だろうと二人だろうと、自立は出来るさ。大した違いじゃない。飢え死にすることなく生きていければ、それでいいんだろう?  一緒に連れていってくれって、しがみついてマッシュに頼んだ。どうしても別れたくなかった。出来る事なら、お互いの体を鎖でグルグル巻きにしたかったよ。ただ鎖がなかったんだ。  マッシュは優しいヤツだ。泣いてた。でも、強いヤツだ。だから譲らなかった。  俺の事は大好きだけど、べったり一緒にいちゃいけない、だとさ。やるべき事はやり遂げたから、島の暮らしを卒業する。どこか他所の土地で、自分の足で立って立派な大人になるんだって。あげく、 「いつか再会した時に・・・エッグが認める俺になりたい」  ときた。  腹立つよな。エッグがそんなにエライのかよ。頭が良すぎて頭がオカシクなっちまったみたいな変人じゃないか。  でも・・・どれだけ悔しくても認めなきゃいけないよな。
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