ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅢ~サイクロンのお話

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 エッグとマッシュ。あの二人の間には、誰も入りこめない。離れていても、心が溶け合ったみたいな、特別な絆がある。俺が泣こうが喚こうが、それは変えられない。どうすることも出来ない。辛いよ。  だから、ピーチやワイルド・キャットの気持ちがわかるんだ。そう、今回はこの二人の事を話そうかな。ヘルズ・スクエアで共に暮らし、共に育ってきた。普通の女の子達だと思っていたのに。  女の子の話だからといって、ホワホワした感じじゃないぜ。バラの花やらキラキラの飾りに彩られてやしない。ハートマークがアチコチに転がってたり、ピンクの雲が浮かんでたり、そんなムードが漂うこともない。  むしろ、その、何て言ったらいいのか、女の子ってスゲエなあ・・・みたいな。なんかちょっと怖いかも・・・てな話だ。  女の子と男の子って、ずいぶん違うんだよな。不思議だよな。 2・  マッシュが島を出て、三日目の事だった。朝イチで、俺の涙も吹っ飛ぶ様な、とんでもない巨大台風がホープ島を襲った。滅多にない事だ。  島の天気ときたら、一年三百六十五日、てんで全く変わらない。いつもメソメソ、グズグズ泣いてる感じ?呆れるほどジメジメで、取り柄と言えば、あまり寒くないって事ぐらい。島中まるごと湿地帯で、泥道、沼地、コケにカビ。ボロボロの建物が数軒、他には何もない所だと言えば、まあ、一番わかりやすいかもな。  台風と言えば、大昔に一度、つむじ曲がりのヤツが来ただけなんだ。そいつがまた、ご機嫌うかがいに現れたのかな。久しぶり、調子はどう?ってか。  大人達はパニックになってたけど、正直、俺は大歓迎だ。  ああ、わかってるよ。災害を嬉しがるなんて、変だよな。不謹慎だって怒る人もいるかもしれないけど、知ったことか。  現在の生活にある程度、満足してるから台風とかが怖いんだろう?幸せな暮らし、落ち着いた日々、それを壊されたくない。だから、災害が嫌いなんだろう?  俺は違う。不幸だった。  マッシュがいない。大好きだったのに、もういない。朝、目が覚めるたび、傍にヤツがいる気がして、振り向いてみても、その姿はどこにもない。
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