ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅢ~サイクロンのお話

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 ワイルド・キャットは、みんなの制止を振り切って箱の後を追いかけ、宝物を取り戻そうとしたんだけど、俺に邪魔されてそれが出来ず、宝物を失ってしまった・・・。  と、これだけの話をするのに、ワイルド・キャットはなんとタップリ二時間半も使い、その間、俺は十七回「あんたが悪い」というフレーズを聞かされた。  なんか納得できねえな。台風は俺がご招待したんじゃねえし、団地がボロボロに崩れかけてるのも、俺のせいじゃない。  しごく常識的な意見だろう。それなのに、ワイルド・キャットときたら、耳を貸すどころか、こんな命令を俺に下しやがった。 [ワイルド・キャット]  私の宝物を探し出してきなさい。 [俺]  はあ?何を命令してんだよ。ヤダよ。 [ワイルド・キャット]  あんたのせいでなくしたんだから、あんたが探すの。何か文句ある? [俺]  あるよ。フツーにおかしいだろ。自分でさがせよ、自分で。 [ワイルド・キャット]  あんたに突き飛ばされて足を痛めたのよ。見てよ、この腫れ。痛いっ。歩けないの。 [俺]  骨、折れたのか? [ワイルド・キャット]  私の心配は私がするわ。   あんたはね、宝物を探し出して持って来れば、それでいいのよ。 [俺]  足が治ってから、自分で探せよ。 [ワイルド・キャット]  今すぐ探し始めなきゃ、どこかにいっちゃうわ。 [俺]  何年かかったって、どの道、見つからないと思うぜ。この嵐の中じゃ、どこに吹っ飛んだかわかりゃしねえもんな。海に落ちたかも。 [ワイルド・キャット]  ひどい事、平気な顔で言って何よ!  あんたが余計な事したから、宝物を捕まえ損なったっていうのに。 [俺]  助けてやったんじゃないかよ。命と宝と、どっちが大切なんだ? [ワイルド・キャット]  今は宝物の方が大事よ。私は死ななかったんだから。 [俺]  いや、だから!それは俺のお陰だろ。 [ワイルド・キャット]  そんな事はどうでもいいの。 [俺]  どうでもよくねえだろ。  死んじまったら、宝物があったって、何にもならないじゃねえかよ。 [ワイルド・キャット]  私、今この場で死にたいくらいだわ。  本当に大切な宝物だったのに。二度と手に入らない、大事な大事な宝物。  それなのに・・・それなのに!それなのに!あんたのせいで、こんな事に!
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