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ワイルド・キャットは、みんなの制止を振り切って箱の後を追いかけ、宝物を取り戻そうとしたんだけど、俺に邪魔されてそれが出来ず、宝物を失ってしまった・・・。
と、これだけの話をするのに、ワイルド・キャットはなんとタップリ二時間半も使い、その間、俺は十七回「あんたが悪い」というフレーズを聞かされた。
なんか納得できねえな。台風は俺がご招待したんじゃねえし、団地がボロボロに崩れかけてるのも、俺のせいじゃない。
しごく常識的な意見だろう。それなのに、ワイルド・キャットときたら、耳を貸すどころか、こんな命令を俺に下しやがった。
[ワイルド・キャット]
私の宝物を探し出してきなさい。
[俺]
はあ?何を命令してんだよ。ヤダよ。
[ワイルド・キャット]
あんたのせいでなくしたんだから、あんたが探すの。何か文句ある?
[俺]
あるよ。フツーにおかしいだろ。自分でさがせよ、自分で。
[ワイルド・キャット]
あんたに突き飛ばされて足を痛めたのよ。見てよ、この腫れ。痛いっ。歩けないの。
[俺]
骨、折れたのか?
[ワイルド・キャット]
私の心配は私がするわ。
あんたはね、宝物を探し出して持って来れば、それでいいのよ。
[俺]
足が治ってから、自分で探せよ。
[ワイルド・キャット]
今すぐ探し始めなきゃ、どこかにいっちゃうわ。
[俺]
何年かかったって、どの道、見つからないと思うぜ。この嵐の中じゃ、どこに吹っ飛んだかわかりゃしねえもんな。海に落ちたかも。
[ワイルド・キャット]
ひどい事、平気な顔で言って何よ!
あんたが余計な事したから、宝物を捕まえ損なったっていうのに。
[俺]
助けてやったんじゃないかよ。命と宝と、どっちが大切なんだ?
[ワイルド・キャット]
今は宝物の方が大事よ。私は死ななかったんだから。
[俺]
いや、だから!それは俺のお陰だろ。
[ワイルド・キャット]
そんな事はどうでもいいの。
[俺]
どうでもよくねえだろ。
死んじまったら、宝物があったって、何にもならないじゃねえかよ。
[ワイルド・キャット]
私、今この場で死にたいくらいだわ。
本当に大切な宝物だったのに。二度と手に入らない、大事な大事な宝物。
それなのに・・・それなのに!それなのに!あんたのせいで、こんな事に!
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