「ソーダの記憶」

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「ソーダの記憶」

掌に落ちた涙の滴。 小さな窓に青空が映っている。 そのなかを、楽しそうに泳いでいる僕がいた。 雲をかき分け、手足をいっぱいに伸ばして、 『こっちにおいでよっ』って、手招きしてる。 じっと見ていると、くるんとターンをして、 満面の笑顔がぐんと近づいてくる。 思わず、滴をペロッと舐めた。 鼓動が身体じゅうを巡っていく。 大きく息を吸って、目を閉じると、 舌の先に、ソーダの味がひりりとある。 それは懐かしい記憶。 幼なじみと半分に割って食べたアイス。 あの時、僕は駆けていったんだ。 『一緒に食べよう』って。 また呼んだら、君は笑ってくれるかな。 掌がむずい。 放課後の屋上にて。
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