1

4/4
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 次の日、幼稚園では「いすとりゲーム」をすることになった。  巧は、足も速いし、目端も利くから、いすとりゲームも大得意だ。  だいたいは、最後の一人まで勝ち残る。  でも、いつも最初に脱落してしまう、サキちゃんのことをかわいそうだなとも思っていた。  サキちゃんは、おとなしい性格だから、お友達といすを取り合ったりできない。むしろ、となりの子が同じいすに座ろうとすると、自分から立ち止まって、ゆずってしまうようなところがある。    サクラコ先生が、輪の形にいすを並べていくのを、みんなでお手伝いする。  巧もその輪に加わったが、そのとき、いいことを思いついた。 「あら、巧くん。いすはもういいわよ」  巧が席からもう一脚、新しくいすを運ぼうとすると、サクラコ先生が止めた。  だが、巧は自信満々でこう言った。 「でも先生、みんなで仲良く遊ばないと。  取り合いばっかりしちゃ、めっ!」  巧によって、人数分、並べられたいすを見て、先生は、ちょっと困った顔をして苦笑いした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!