10人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
次の日、幼稚園では「いすとりゲーム」をすることになった。
巧は、足も速いし、目端も利くから、いすとりゲームも大得意だ。
だいたいは、最後の一人まで勝ち残る。
でも、いつも最初に脱落してしまう、サキちゃんのことをかわいそうだなとも思っていた。
サキちゃんは、おとなしい性格だから、お友達といすを取り合ったりできない。むしろ、となりの子が同じいすに座ろうとすると、自分から立ち止まって、ゆずってしまうようなところがある。
サクラコ先生が、輪の形にいすを並べていくのを、みんなでお手伝いする。
巧もその輪に加わったが、そのとき、いいことを思いついた。
「あら、巧くん。いすはもういいわよ」
巧が席からもう一脚、新しくいすを運ぼうとすると、サクラコ先生が止めた。
だが、巧は自信満々でこう言った。
「でも先生、みんなで仲良く遊ばないと。
取り合いばっかりしちゃ、めっ!」
巧によって、人数分、並べられたいすを見て、先生は、ちょっと困った顔をして苦笑いした。
最初のコメントを投稿しよう!