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奏と巧が、ごはんを食べ終えて、おふろに入って、あとはもう寝るだけだというころになって、お父さんはやっと帰ってくる。
お父さんは、いつも仕事で忙しい。
お母さんは一年前からいない。
お母さんは天国に行ったんだよ、とお父さんは言っていた。
もう帰ってこないんだよ、って。
お父さんが帰ってくると奏はうれしい。
「おかえりなさい」と言うと
「うん。ただいま」と言って、いつも奏を抱き上げてくれる。
「おかえり!!!」
横から巧が、大声で叫んで、お父さんの服を引っ張る。
早く自分も抱き上げてほしくてしかたないのだ。
「はいはい」とお父さんは笑う。
そして奏を、”たかいたかい”するように何度も縦に揺さぶってから、床に降ろして、今度は巧を”たかいたかい”する。
足から抱え上げて横にも揺らして、ブゥーンと、飛行機ごっこもする。
巧が、きゃっきゃっと喜んで叫ぶ。
「もう一回、ブーンして!」
巧は、奏のことなんか忘れてしまっているみたいに、お父さんを独り占めだ。
「そんなに興奮させないで。もう寝るんだから」
と、おばあちゃんはお父さんをしかる。
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