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そう言われて、巧を降ろしながらも、
「僕が寝かしつけるからいいだろ」
とお父さんが言うと、奏はうれしい。
「あんたは早くごはん食べて、おふろに入りなさいよ」
おばあちゃんはまるで子どもに言うみたいに、お父さんに言う。
お父さんはおばあちゃんの子どもだから、しかたないのかもしれないけれど。
おばあちゃんは、ちょっと怒ったような顔をしている。
そんなことには全然かまわない様子で、
「これ読んで」
巧がお父さんに、本を持ってくる。
「おばあちゃんが読んであげるから。
お父さんは疲れてるのよ」
おばあちゃんの言葉にも、巧は大きい声で堂々と言う。
「やだ! たっくん、たすくさんと寝るもん」
「匡久さん」というのは、お父さんの名前だ。
お母さんは、お父さんのことをそう呼んでいたし、おばあちゃんも、お父さんを呼ぶときには「匡久」と呼ぶ。
巧は、お母さんが呼んでいた呼び方を、そのまま真似しているのだ。
以前からずっと「たすくさん」と呼んでいる。
「じゃ、ご本一回読んだら、ちゃんと寝るんだよ」
そう言ってお父さんは、巧と奏を寝室に連れていく。
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