10人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
3
寝室には、大きいベッドが二つある。
大人が二人寝てもまだ広いくらいのベッドが、二つくっつけて並べてある。
そのひとつに、三人でかたまって寝転ぶ。
お父さんは、仕事から帰ってきた服のままだ。
お父さんを真ん中に、三人で川の字みたいになって寝る。
真ん中が長い、変な川の字になる。
そうして真ん中のお父さんが、本をひらいて読み始める。
巧は、本のほうへ身を乗り出したまま、数ページも進まないうちにすやすや寝息を立てている。
それを、お父さんは、そうっと仰向けに寝かせ直して、きれいにお布団をかけてあげる。巧はぐっすり眠っていて、気づきもしない。
「あのね、お父さん」
奏は、さっきおばあちゃんに尋ねたことを、ひそひそ声で、お父さんにも尋ねてみた。
どうしてゲームなら取り合いしてもいいのか、という話だ。
お父さんは、「うーん」と言って悩む。
そして、本をぱたんと閉じて、奏のほうに、体ごと向き直った。
それだけで、奏はうれしい。
まともに相手をしてもらえるってことだから。
最初のコメントを投稿しよう!