10人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「どうしてだろうなあ」
と、お父さんは、真剣に考えてくれる。
「やっぱり、取り合いや競争って
生活の中で、なくならないものだからかなあ。
どうしても、何かを取り合わなくちゃならないときもあるんだよ。
だからゲームは練習なんじゃないかな。
そういうときの度胸もつけないとね」
「でもね」
奏は思い切って言ってみた。
「そういうときに、取り合いしなくていい練習になるゲームを
すればいいんじゃないのかなあ」
すると、お父さんは、奏の目を見て、
「そうだねえ。お父さんにも、なんでだかよくわからないや」
と、照れくさそうにつぶやき、
「かなちゃんは、取り合いするの、好きじゃないのかな?」
と、ちょっと微笑んだ。
そう訊かれて、奏はなぜか、急に涙が出る。
お父さんは、びっくりした表情をしたけど、黙って奏の背中を抱き寄せて、ぽん、ぽん、とゆっくり優しくたたいてくれる。
それからしばらくして、こう訊ねた。
最初のコメントを投稿しよう!