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学校から帰宅して、亜希がアパートのドアを開けると、早速、父と母の言い争う声が聞こえてきた。
「明るいうちから酒なんで飲んで、本当にいいご身分だね。
あんたなんて早く死んでくれればいいのに!」
「そんなにオレの顔が見たくないなら、出てってやるよ。
パチンコに行くから三万出しな」
「そんなお金あるわけないでしょ!
あんたが見境なく借金を作るから!」
「たまたま運が悪かっただけだろ。
人生ってヤツは運がすべてだ」
「運が悪いのは私だよ。
こんな貧乏神と一緒に生活しないといけないんだから」
亜希は足音を立てないように、そっとアパートの中に入っていったが、機嫌の悪い母がそんな亜希を見つけてこう言ってきた。
「帰ってきたのに、挨拶もしないのかい?
本当にかわいくない子だね。
ダメなところがこの人にそっくりだよ」
亜希はそんな母の言葉を無視したが、母はさらに言葉を重ねた。
「あんたはもう高校生だろ。
それならさ、家でぼうっとしてないでバイトでも探してきな。
学費だってタダじゃないんだよ」
亜希は母にそう言われると、泣きそうな顔でつぶやいた。
「最悪だよ……。
こんな家……」
「何が最悪なんだよ。
私らがいなかったら、あんたはこの世にいないんだからね」
「別な家に生まれれば良かった……。
お父さんもお母さんも嫌いだよ!」
亜希はそう言うと、足早に自分の部屋に行き、ビニール性の白いレインコートを着て、玄関の方に走っていった。
「こんな雨の日にどこに行くんだい?」
亜希は後ろから聞こえてきた母の声を無視して、アパートを飛び出した。
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