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はいどうも、羽佐間楓です。
今回は大失態を犯しました。今、司から絶賛説教中です。何故なら……
「楓。なんで弁当ねぇんだよ!」
「ほっんとすいませんでした‼︎‼︎」
そう、お弁当を作り忘れました。テヘペロ☆
…いや、本当に許して欲しい。
今朝の出来事で早朝から呼び出され、不法侵入により呼び出された警備会社へ経緯を説明、謝罪。
そこから今回の件に関する報告書を纏め、理事長と執行部に提出。そして転校生に関する報告書を見ていたら、いつの間にかお昼になっていた。
つまり、俺にはお弁当を作る時間どころか、朝飯を食べる暇さえなかったのだ。
それを土下座しながら説明し、昼食を奢ると言うと漸く納得してくれた。
俺と司は耳栓をして食堂に入る。
瞬間、悲鳴と怒号が聞こえた。耳栓をしているのに、だ。
耳栓を外し、空いている席に座る。その間ずっと俺達に関する会話と好奇な視線を受けた。まぁ、普段食堂を使わない人気者が現れたらこうなるか。
「んで、何食うの?」
「カツカレー。お前はきつねうどんだろ?」
「流石幼馴染。俺の好物を分かってるね。」
「うるせ。さっさと頼め。」
「ハイハイ。」
注文してから十分。料理が到着した。
俺は七味をたっぷり振りかけるとそれを食した。
「うめー。偶には食堂もいいな。」
「こんな注目されなかったらな。ん、楓。今度の昼カツカレー作ってくれ。」
「要望が多いですなぁ。まぁいいけど。」
因みに俺は知らなかったが、この日カツカレーときつねうどんの売上が大幅に上がったらしい。どうでもいいけど。
「そんで楓。今日転校生に会ったってのはマジか?」
「マジだよ。俺アレ無理。あの人より無理。生理的に受け付けねぇよ。成瀬も会わせるな危険って感じになってたし。」
「でも鳴山先輩が堕ちたんだろ?大丈夫なのかよ。」
「俺に聞くな。同じ執行部なんだから自分で確かめろ。」
そう言った瞬間、食堂が少し鎮まり、陰口の様なものが聞こえてきた。
何事かと思い入口に目をやると、噂をすればなんとやら。話題に上がった転校生が1年の人気者と一緒に食堂に入ってきた。
「ほらあのモジャモジャ。アレが転校生だよ。」
俺の言葉に司は俺の視線の先へ振り向いた。
暫く見ていると、とても興味の失せた顔をしていた。
「…んだよあのあからさまな変装。頭に付いてんのカツラじゃね?」
「多分な…まぁ、校則上問題はねぇけど。さて、厄介事に巻き込まれない内に帰」
「「キャー‼︎執行部の皆さんだ!」」
俺は思わず舌打ちした。
俺には大っ嫌いなあの人がいる。それも執行部に。それを知っている司も俺を気遣って早く出ようとしてくれた。だが、バッチリと目が合ってしまった。
「やべッ目ぇ合った!早く離れるぞ!」
「何やってんだよ!」
離れようにも執行部を取り囲む人混みが邪魔で思うように動けない。ふと影が差し込んだ気がして俺は顔を上げる。
そこには、ニヤリと俺を物理的に見下している生徒会長が立っていた。司はあちゃーと額に手を当て、ほかの執行部は何事かと会長を見ている。
「珍しいな。お前が此処にいるとは。」
「…今日は色々あって弁当が作れなかったんですよ。いちゃ行けないんですか逆に。」
「いや?そんな事は言ってない。飯がまだなら一緒に食うぞ。」
「もう食べたんでお断りしますよ藤堂会長。それでは、これから見回りがあるんで。」
そう言って離れようとすると腕を掴まれた。投げ飛ばしたくなる思いを捻じ伏せて引き攣った笑みを浮かべながら藤堂会長を睨む。
そう、俺の大っ嫌いなあの人とはコイツ。藤堂日向だ。初めて出会ったのは中等部入学当初。高圧的な態度で執行部にスカウトされ、断ったのが始まり。あからさまに嫌っている俺を面白そうに付け回しチョッカイを出してくる。その人から離れる為風紀に入るも、それから風紀に会長絡みの仕事をよく俺に回すようになり、この先輩を大っ嫌いになるにはそう時間は掛からなかった。
「何ですか?もう行かなきゃ行けないんですけど。」
「いつまで風紀なんてやってんだよ。早く執行部に来い。」
「何度も言ってますよね?答えはノーです。司、行こう。」
「ああ。と言うわけなんで、先に失礼します。」
俺は掴まれた手を振り払うと、司を連れて出て行った。ホント、今日は厄日だ。
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