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その夜、祖母が奥座敷に布団を敷いてくれた。その中にもぐりこみ、さあ眠ろうかと思ったけど、いつもと違う環境なのでなかなか寝付けない。田舎の夜は妙に静かなので、些細な物音が耳につくのだ。何かが軋む音にびくりとなり目を開けてもそこには暗闇があるだけだ。見えない何かに怯えるようにすっぽりと頭から布団をかぶったところで、ふとミサキちゃんのことが脳裏を過ぎった。そう言えば、彼女はよく独り言を口にしていたらしいけど、もしかするとそうじゃなかったのかもしれない。
見えない何か。ミサキちゃんにはそれが本当に見えていたのではないだろうか。その見えない何かと話している様子が、他の人には独り言を言っているように見えてしまう。となると、神社の境内でやっていた花いちもんめにしても、ひょっとすると見えない何かと遊んでいただけなのかもしれない。それに負けたものだから相手の組に取られて……消えた?
だったらその相手はいったい何者なのか。
そうだ。明日この話をもう一度詳しく祖母に訊いてみよう。なんなら件の神社に行ってみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えるうち、いつの間にか眠りに落ちていた。
翌朝、祖母は布団の中で冷たくなっていた。
負けたのだ。
咄嗟にそう思った。夢の中で祖母は花いちもんめに負けてしまったのだ。今頃きっと、ミサキちゃんが誰と花いちもんめをしていたのか、祖母はその正体を知ったことだろう。
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