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嫉妬
思い返せば嫉妬ばかりの人生だった。
小中と五年間、野球をやっていた。その内、バッターボックスに入ったのは七回。もっぱら自分の役割は、主軸メンバーのサポートだった。
野球はチームで行うスポーツなので、自分が出ていなくてもチームメイトを応援しなければいけないのだが、これが俺にとっては不快極まりなかった。
なぜ他人の活躍を期待しないといけないのか?それを目の前で見せられるくらいなら、負けた方がずいぶんとマシだ。いや、もうさっさと負けてくれ。
断っておくが、決して俺のチームが強豪というわけではない。自分の能力が凡人以下だった。ただそれだけだ。
高校では、テニスに手を出した。「個人競技なら、自分の活躍だけに集中できる。求めるべきは自分の活躍・名誉だけだ」そういう魂胆である。
我ながら完璧な選択だと思ったが、どうやらそれも間違いであったらしい。
俺が一、二回戦で早々と敗北を期する中、チームメイトはまだ勝ち残っていやがる。
またしても人の幸福をやっかんでいる俺に、「今回は残念だったな。ひとまず他の奴らの応援に回ろう。宮崎のやつは絶好調だ。入賞するんじゃないか」と顧問は声をかけてくる。
「お前は全く人の気持ちを理解していない。それでも教師か?」と言いたいところだが、そんな度胸は持ち合わせていない。
「脱落しろ」という最大の敵意を、鼓舞の言葉で包み込み、ただ仲間に届けるばかりだった。
しかし、俺もバカじゃない。ある時気づいたのだ。上ばかり見て絶望していては、人生損だということに。
下を見て安心すればいい。俺より下の奴らは、俺より多くの不幸を受けている。俺より活躍する心配もない。
人の幸せに共感はできない。俺は、人の不幸でしか躍れない。
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