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アイドルって、なれるものなんですね。
「ケンちゃーーーーん!」
「可愛いよーーーー!!」
図太い黄色い声、所謂「萌え豚」たちの声を全身に浴びせらせて、身体中の穴という穴から冷や汗が出るのが分かる。特に脇はひどく、きているワイシャツの脇部分が濡れているのを視認できるくらいには出ている気がする。
マジやばい。
「けんちゃん、緊張しすぎだよ。笑って笑って」
「花梨さん・・・・・・」
隣で女神のような笑顔を浮かべる美少女がいるが、彼女が男を無意識に振り回す悪魔のような人であるということはここ一ヶ月の間でよくわかった。なので、彼女に頼ってはいけない、彼女の言葉通りに動いてはいけない。そうすればもっと面倒になる。
キャパが150名の大きめのライブハウスに押し掛けている萌え豚達。奴らの調教は完璧で、ペンライトはもちろんのこと公式のマフラータオルやTシャツをフルセットの奴がほとんどだ。目がガチすぎて怖い。
そして何より、その目を今日は俺にも向けられているという事実が怖すぎる。
なんでこんなことになったのだろうと思い、俺はこれまでのことを振り返る。
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