ある日『後輩くん』

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「お前、もう帰るだろう? 退勤処理してきてやるから、ここでちょっとコイツと待っててくれないか?」  分かってるわよね? という視線が俺に向かって飛んでくる。自分が居なくなった瞬間に、後輩にそれとなく自分の尊敬出来る点を聞いておけということだ。 「高校生を一人にするのも危ないですもんね? 分かりました」  いや、可愛い女子高生じゃねぇんだから。いつも一人で帰ってるっての。ちょっと天然が入っているのか? 先輩の思惑に気付けよ、イケメン。 「じゃあ、宜しく」  スッとスマートにビルの中へと消えていくオネおじ……目がマジだったな、あの人。 「うちの叔父とは長いんですか?」 「いや、まだ二ヶ月くらいかな」  そうだろうな、もっと前から居たら俺も会ってるからな。こんなところで今「はじめまして」をしてるわけがない。 「――尊敬出来るところあります? うちだとちょっと抜けてるところがあるっていうか……」  敢えて、こちらが否定的なことを言うことによって、相手に肯定的なことを言わせようという作戦である。ちなみに、オネおじに抜け目など無い。 「うーん」  後輩が悩んでいると何やら彼のスマホがピロンと鳴った。仕事のことかもしれないと思ったのだろう、徐にそれを確認し出す。
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