SCP-548-JPの資料

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SCP-548-JPの資料

SCP-548-JPは、雨に打たれると「雨音がピアノの音色に変わる」という特性を持っている。 この現象はSCP-548-JP-Aと分類された。 傘が奏でるその旋律は、ショパンの『練習曲作品10第3番ホ長調』と一致する。 ただし、実際に傘布へ水滴が接触し本来の雨音が発生する筈のタイミングと音が発生するタイミングには、1秒前後のタイムラグが存在している。 恐らくだが、この間に音の変換や楽曲へのチューニングを行っていると考えられている。 室内に入る、天候が回復するなどによって雨の接触が停止するか、あるいは楽曲を再現できないレベルまで雨粒が減少した場合、この「演奏」は楽曲の途中であっても終了し、雨音は通常のそれに戻る。 しかし、「演奏」が終わっても雨の接触が続いていた場合、口頭でリクエストすると、その楽曲の「演奏」が始まる。 さらに音響分析の結果、どうも「演奏」のたびに技術が向上しているらしいことが判った。 難易度が高い曲のリクエストを受けた場合、その曲調にはミスが多発する。しかし、回数を重ねるごとにそれは減少し、最後には原曲の完全な再現に到達する。 また、演奏の合間に拍手や賛辞を贈ると技術の向上が3倍から5倍へと跳ね上がり、音色にも楽しそうな色が混じる。 逆に罵声などを食らった場合、乱雑な演奏になったりリクエストを無視したりするなどの反応が見られた(塚原さんがこのサイトに来る前に行った実験では、被験者の鼓膜が破壊されるほどの大音量と乱雑な演奏だったという。5分間も罵倒されれば怒るのは当然だろう)。 この事から、どうやらこの傘は自我を持っているらしいと判明した。 「ピアノの音色、か……」 なんだか楽しそうな実験だ。次の雨の日を楽しみにしながら、私は残りの仕事に取り掛かった。
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