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66回目の実験
SCP-548-JPの実験は今回で66回目だ。
内容は、「助手(私)が傘を持ち、複数の曲をリクエストする」というもの。曲目は『練習曲作品10第3番ホ長調』と『きらきら星変奏曲』。
きらきら星変奏曲は私も好きな曲だ。
同じ曲を弾いていたとしても、曲調が変わるだけで気分も明るくなる。
土砂降りの雨の中でも、それは変わらないだろう。
土砂降りの雨の中、中庭でSCP-548-JPを──傘を広げる。
SCP-548-JPの異常性ことSCP-548-JP-Aは発生した。
聴き慣れてきたこの旋律だが、間近で聴くと、コンサート会場の特等席で演奏を聴いているように感じる。
一説によると、人間の声が一番綺麗に聞こえるのは雨天時の傘の中らしい。
人間の声(音波)が雨粒に反射し傘の中で共鳴するためらしく、特に雨量がやや多く囁くような声の時が最も美しく聞こえるのだとか。
それと似たような現象なのだろうか。音色がとても美しく感じる。
気がつくと、SCP-548-JP-Aは終わっていて、雨の音だけが響いていた。
実験の本題に入ろう。
「ショパンの『練習曲作品10第3番ホ長調』と、『きらきら星変奏曲』の演奏をお願いします」
リクエストの直後に一瞬の間を置いて、『練習曲作品10第3番ホ長調』が奏でられ、その後に『きらきら星変奏曲』も演奏された。
リクエストは複数曲でも有効らしい。
演奏が終わってから報告書を書き、それが終わってから窓の向こうを見てみた。
時刻は午後5時を過ぎた頃。
空には演奏の時とは真反対の、美しい夕焼けが広がっていた。
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