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106回目の実験
今回の実験は、聴衆の人数を少し増やして行うことになった。
実験内容は、「塚原さんが傘を持ち、さらに博士1名、エージェント(異常存在を回収する専門家、と言ったらわかりやすいだろうか)1名、研究員1名、合計4人で実験する」というもの。
ちなみに私は経過観察や実験の記録を行う。
塚原さんが中庭に出て、SCP-548-JPの傘布を広げる。
一瞬の間を置いて、静かに曲が始まった。
勿論、他の実験参加者の方々にも、SCP-548-JPに拍手喝采を送ってくれと頼んでいる。
演奏と賛辞が終わった後、塚原さんがリクエストしたのは……
「ベートーベンの『運命』をお願いします」
いつかやると思ってたよ。
結論から言おう。リクエストは有効だった。
持ち込んだPCの音響分析ソフトを使わなくても分かるほど飛躍した演奏技術を以って、とても楽しそうに演奏された。
今回の報告書の内容は“一度に複数の人間に賛辞を受けると成長速度が飛躍的に向上するようだ。”ということ。
書いていてふと思った。
──コンサートのように、数百人の前で賛辞を受けて演奏したらどうなるのだろう?
そういう実験をするとなると、かなり大規模な実験になる。
実現には難しいだろうと思いつつ、報告書を仕上げていたのだった。
その後、あんなことが起きることは、私も塚原さんも予想していなかった。
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