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実験前
「SCP-548-JPの実験助手……ですか?」
私は思わず聞き返した。
塚原上級研究員は、私を助手に指名し、何の変哲も無いように見える異常存在──通称、SCP-548-JPの実験を行うことにした。
塚原上級研究員は、数日前にこのサイト(研究所)に引っ越してきた研究員だ。
彼が行なっている実験は異常存在・SCP-548-JPに関するもの。
SCP-548-JPは、見た目はごく普通のありふれたビニール傘。特筆すべきことは特に無い。
しかし、この傘は私達「SCP財団」が調べている異常存在の1つだ。
その特性は、詳しいことは資料に記載されているのだが……端的に言うと、「傘布に雨粒が当たると、その雨音がピアノの音色に変わる」というもの。
今までDクラス職員(要するに雑用だったり危険な仕事にも関わる職員だ)を被験者に実験を行ってきたのだが、今まで塚原上級研究員がいたサイトだと、好天が続く時期がある。
そうなると、詳細は後述するが財団の目的である『確保、収容、保護』の1つである『保護』──つまり、異常存在の異常性を維持し続けることが難しいことがわかった為、安定した降雨が見込めるこのサイトに引っ越して来たという。
「じゃあ、次に雨が降った日に実験しよう。定期的に雨に触れさせないと、演奏技術が落ちてしまうからね。それまでに資料に目を通しておいてくれ」
そう言って、塚原上級研究員──ここでは、色々と面倒だから「塚原さん」と呼ぶ──は部屋を去っていった。
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