28人が本棚に入れています
本棚に追加
大きな森の入り口に木こり夫婦が子供たちと住んでいた。
兄はヘゼル、妹はグレル。
木こり一家の生活はぎりぎで、その土地に大飢饉が見舞うと、全員が食べていける食料を得ることも難しかった。
やがて、妻は流行り病を患った。
医者に見せる余裕もなく、満足に栄養をとることもできなかった為、残念だか別れを惜しむ余裕もなく亡くなった。
木こりは苦悩した。
夜な夜なひとり寂しく、もうそこに存在しない妻に向かって呟いた。
「おれたちはどうすればいいだろう?
自分の分ももう僅か、どうやって可哀そうな子供たちに食べさていくか?」
どんなに待っても妻からの返事などあるわけがなく、木こりは途方に暮れるのである。
そんな様子を見た兄ヘゼルは森を出ては町に降り、小さな手伝い仕事を見つけると必死に懇願し小金を稼ぐようになった。
稼ぎはまちまちで少年が稼げる額など微々たるものだったが、少年が古くなったパンや傷みはじめた野菜などを買って帰ると父親の木こりは涙を浮かべて喜んだ。
裕福とは程遠い貧しい暮らしであったが、木こりの稼ぎとベゼルの努力で苦しくも、なんとか3人笑顔を絶やすことなく生きていけた。
数年経ち、ベゼルは背も伸び少年から青年になろうとしていた。第一変声期は過ぎ高く幼かった声はもう聞けない。グレルは可憐な少女となり、発言が大人びても来たが、ベゼルや木こりからするとまだまだ幼さを拭え無いといったところだった。
成長したベゼルの働きの助けもあり生活はささやかに安定を見せていた。
そんなある日のことである。
一人の女性が木こりの家を訪ねてやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!