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J1「あの日の空」
奇妙で危険なバグとの共存から5年-----
政府は、空中戦に長けた人材を増やすため、20歳〜30歳までの男女を限定とした軍学校「ハーミッド特殊空軍学校」を設立。
国を守るため、家族を守るため、大切な人を守るために志願した大卒生は多く、男女問わず入学していた。
この春、大学を卒業し新たに入学する成人は約140人。今日は入学式が執り行われる日だ。海沿いに建てられた、グレー一色の大きな軍艦のような建物の前で空を見上げる水色のショートボブの女性がいた。
空では、背中にジェットパックを付けた男女が戦闘訓練をしていた。
雲一つない真っ青な空を見て、10年前に起こった悲劇を思い出す。
{あの日と同じ空だ…}
10年前 ハーミッド市にある巨大なショッピングモール…
地元の人々の遊び場として日夜混雑している。休日という事もあり、この日はかなり混んでいた。
地球での生息に慣れてきたバグは、人が集まる所を選んで襲っていた。休日の商業施設は格好の場所だった。
西の森林地帯から大量のバグがショッピングモールに向かっているとの情報を掴んだハーミッド空軍は、黄色のジェットパックを背負い、黒い特殊スーツを着た空中戦闘部隊(空戦隊)を10人送った。
そのうちの3人は、森林地帯の出口付近を張り、残りはショッピングモールへ向かう。
15:00 木々が激しく揺れはじめ、大量のバグが猛スピードで突っ込んできた。森林地帯を見張っていた空戦隊は応戦するが、予想を上回る量に悪戦苦闘。5分もしないうちに2人が食い殺されてしまう。残された1人は、ジェットの力を上手く操りなんとか応戦していたが、バグの鋭い爪が脇腹を抉り、致命傷を負ってしまう。進行阻止を諦め、ショッピングモールに向かっていた他の空戦隊に無線を掛ける。
「半数は食い止めたが、想像以上に素早い…。2人死亡、俺も脇腹を負傷した…。気をつけ…」
抉られた脇腹の激痛に意識が遠のいて、空中で戦意喪失した瞬間、背後からバグに食われてしまった。
ショッピングモールの屋上で警備を担当していた空戦隊が無線で断末魔を聴いた。リーダーである赤髪ロングの女性隊員べレッタも無線を聞いて、森林地帯の方に小型望遠鏡を向ける。
同じく屋上にいた同期の黒髪ショートボブの女性隊員が話し掛ける。
「べレッタ、状況は?」
「12時の方向に6。3時の方向15。」
「3時の方向は間に合わないわね…」
「うん。西ゲートにいる隊員に任せる」
ベレッタは、ショッピングモールの1階西の入り口付近を警備している隊員に無線を掛ける。
「屋上班のベレッタだ。3時の方向から15匹来る。気を付けろ!」
「こっちは2対6か。やってやろうじゃん!」
「行くよ、ミリア!」
屋上班のベレッタとミリアは、ジェットパックを起動させて空中戦に挑む。先頭に出たのはベレッタだ。ジェットの勢いを加速させ、バグ1体を殴り飛ばす。ベレッタのジェットパックを踏み台にして、後方のバグに両足蹴りを食らわすミリア。
あっという間に2匹撃退する。しかし、さらに後方には通常の両腕に加え尖った腕が2本生えた亜種も控えていた。初めて見る型に警戒するミリア。
「あの腕…。人間同様、あいつらも進化してるって事?」
亜種型バグは、ベレッタに狙いを定めて猛スピードで突っ込んでくる。
両腕を前に持ってきてガードするが、腕を掴まれてしまう。
「ベレッタ!!」
よそ見をしてしまったミリアに猛攻を仕掛けるバグ。持ち前の反射神経とジェット噴射を合わせた戦術で、回避して返り討ちにする。
腕を掴まれて動きを封じられたベレッタも抵抗を見せる。亜種型バグは空いていた2本の腕で突き刺そうとする。しかし、ベレッタは瞬時にジェットを噴射させて掴まれた腕を振り払う。亜種型の頭上へ上がり、背後へ回り込み羽をむしり取る。飛行能力を失った亜種型は、大量の緑色の血を吹き出しながら落ちていく。
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