J1「あの日の空」

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ベレッタは腰についているボタンを押すと、左脚にオレンジ色のイナズマが走る。ジェットを最大噴射させて猛スピードで、落下中の亜種型にイナズマキックを食らわす。亜種型は高電圧で爆ぜた。 頭上にいたミリアは、ベレッタの無事を確認してホッとする。 「ふぅ…。残りは私が片付ける。ゲートに行って!!」 「…分かった!死なないでよ!!」「任せろ!」 ミリアはこの場所に留まり、ベレッタは西ゲートへ向かった。 15:30 ショッピングモール 1階 西ゲート 状況は悪く、亜種型が混ざった大量のバグに悪戦苦闘する空戦隊。既に西ゲートを守っていた隊員は殆どが戦意喪失していた。しかし、バグの死体も複数散らばっていた。 ジェットパックを壊され、うつ伏せに倒れこんだ男性隊員が必死に逃げようとする。重症を負っていたバグは、男性隊員に狙いを定めとどめを刺そうと近付く。その時、ベレッタのイナズマキックがバグを貫いた。 「べ、ベレッタ…。助かったよ」 「大丈夫?…他の隊員はダメか…」 辺りを見渡すと、西ゲートを守っていた隊員の身体の一部や大破したジェットパックが散乱していた。 「1匹通してしまった…」 気を落とす男性隊員の肩を軽く叩き、ショッピングモール内へ入る。 中は既に、地元警察と警備員の誘導で客の姿は無かった。 モール内を警戒しながら歩いていると、子供の悲鳴が聞こえる。ジェットを噴射して、悲鳴の方向へ向かった。 南ゲートの外に避難させられた客たち。水色髪の小さな女の子が、警備員に止められていた。 「離してください!!ママが!ママが中にいるの!!」 一匹のバグが、女の子の母親と見られる女性を鷲掴みにして、モール内を歩いていた。止める警備員が心を痛めながら言う。 「お嬢ちゃん諦めるんだ!」「嫌だ!目の前にいるのに!うぅ!!」 警備員の腕を振り払いモール内へ入ってしまう。 「お嬢ちゃん!!」 一目散にバグの元へ走る。ゆっくりと歩いていたバグは女の子に気付き、捕食しようとした。猛スピードで進むベレッタもバグと女の子を確認し、イナズマキックを仕掛ける。 {!!} しかし、バグに掴まれていた女性が目に入る。このままキックを放てば巻き込んでしまうと考え、キックを一瞬躊躇してしまう。その一瞬がバグのカウンターを誘う。空中でキックを止めたベレッタは、不安定な体制になってしまい、バグの強烈な左フックを受けてしまう。近くの電光掲示板に叩きつけられ地面に転がる。 「う…。あの女性は…母親?」 目の前で起きた戦闘に我を失い、立ち竦んでしまう女の子。 バグは再び女の子に狙いを定め近づく。 頭から流れる血を拭きながら立ち上がり、半分故障したジェットを使ってバグに飛び掛かるが、さっきの一撃のダメージが大きく動きが鈍くなっていた。 今度は尻尾で叩かれ、壁に打ち付けられる。この一撃が致命傷となり、吐血してしまった。 バグは、腕を刃に変形させて女の子を突き刺す。大量の血が噴き出し、機械と肉を貫通する音がモール内に響いた。 死を覚悟した女の子が目を開けると、目の前でベレッタが片膝を付いて立っていた。みぞおちから血だらけの尖った刃が付き出ている。大量の血を吐き出し意識が遠のくベレッタ。
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