J1「あの日の空」

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屋上の戦いを無事に終え、モール内を猛スピードで進むミリア。 遠目からバグと女の子を目視する。 {女の子…?なんであんなところに…は!} バグの腕が貫通したベレッタの姿が目に入り、一気に怒りがこみ上げる。 {そ、そんな…ベレッタ…!!} ジェットを最大噴射させ、腰に付いている装置を起動させる。冷気がミリアの腕部分にまとわりつく。バグの顔面に冷気を帯びた手でパンチすると、瞬時に凍り粉々に砕けた。掴んでいた女の子の母親を離し後ろに倒れ込む。その拍子にベレッタの身体から貫通していた腕も抜けた。 「ベレッタ!!しっかりしろ!!」 ミリアは女の子を無視してベレッタを介抱する。 「嘘だろ…ベレッタ…」 ベレッタはすでに絶命していた。 女の子は、警備員に連れられモール外に避難させられる。外は、今までの惨事が嘘のように晴れ渡った晴天だった。 現在 ハーミッド特殊空軍学校前… 10年前に起こった、ショッピングモールの悲劇を思い出していた水色髪の女性はこの時の女の子だった。 軍服のネクタイを締め直し校舎に入る。 11:00 体育館で入学式が行われた。空軍学校長の挨拶が長々と続いた後、化学研究長から空戦隊が背負うジェットパックの説明がされた。 「空中戦の要となるジェットパックエンジンの説明をする」 ジェットパックの解体図がバーチャルで巨大スクリーンに展開される。 「軍の特殊研究機関が開発した、高性能のジェットパックだ。装着者の意識とシンクロしているため、ジェットの威力をイメージでコントロールできる。非常に便利な構造だが、常に意識していないと不安定な飛行になってしまうから気を付けろ。次は装甲だ。こいつも意識とシンクロしている。各部に散りばめられた装甲には、イメージを具現化できる装置が内蔵されているため、必殺技が使える。雷、炎、氷、風の中からタイプを選び、それぞれのイメージを組み合わせることで、強力な技に変わる。そして、全身スーツだ。一見変哲の無いタイツ型のスーツに見えるが、銃弾くらいの衝撃ならほぼ感じない。多少打ち付けられても最小限のダメージになっている。以上が空戦隊の基本装備だ。詳しくは訓練の中で教える!」 学校や空戦隊の説明が終わりクラス分けが行われた。生徒たちは、それぞれの寮棟に入る。寮内はかなり広く、高級ホテルのような内装で入口には大きなロビーがあった。水色髪の女性は角のソファーに座り、ジュースを飲んでいた。寮内にアナウンスが響く。 《第三隊隊長のミリア・ミゼルだ。13:30からミーティングルームで訓練の説明を行う。遅れないように》 ロビーがざわざわとし始める。黄緑髪のツインテールの女性が水色髪の女性に近付く。 「あんたの事、知ってるよ。あのショッピングモールで空戦隊を死なせた子供でしょ?」 「…」 「ちっ!何黙ってんだよ!!あんたはある意味人殺しだよ。罪滅ぼしの為にここに入った訳?」 「…」 「黙ってないでなんか言えよ!!」 ツインテールの女性が胸ぐらを掴んで無理やり立たせる。 同隊の生徒たちの視線が一斉に向けらる。 「私のパパは空戦隊だったの。当時のあんたみたいな、身勝手な行動をとった子供をかばってバグに食われたんだよ…!そんな奴が人を守る空戦隊を語るなんて、反吐が出るわ!!」 「そこまでにしとけよ」 その時、ブロンドアッシュのオールバックヘアの女性が止めに入った。 「誰あんた?こいつの友達?」 「いや。まったく知らない子だけど、いきなり胸ぐら掴んで喧嘩売るのは良くないんじゃない?」 「…ふん。覚えてなさい!」 ツインテールを勢いよく振って、去って行った。 オールバックヘアの女性が水色髪の女性に近付く。 「あんたも何か言ったら?あの手のタイプは、正論ぶつければ意外と引くよ」 「あ、ありがとうございます…。あの人が言っていた事は本当なんです…。小さい頃、目の前で母親がバグに連れて行かれそうになった時、止めてくれた人を振り払って、助けようとしました。私に向けられたバグの攻撃をかばってくれたのが女性の空戦隊の方でした…。バグの腕がみぞおちを貫通して、その女性隊員は亡くなりました…。そうです、私は罪を償いたくて…」 「そうかい。理由なんてなんでもいいじゃん。当時は身勝手だった女の子が空戦隊を志願しただけでも、罪滅ぼしになるんじゃないか?」 「…」 「黙り込むなよ。そうだ、名前は?」「エリカ・クライシスです」 「アネット・リスタだ。よろしくエリカ」 アネットはエリカに手を差し出す。人見知りだったエリカは恐る恐る握手に応じる。 「よ、よろしくお願いします…アネットさん」「敬語はやめてよ。同期じゃん」 ツインテールの女性は仲良くじゃれ合っている姿を遠くから見ていた。 {なによ…}
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