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13:28 第三隊ミーティングルーム。
ミリアが集まった生徒たちの前に立ち訓練について説明した。
エリカはミリアに見覚えがあった。そう、ショッピングモールの事件の時に、ベレッタと任務に付いていた黒髪パッツンヘアの女性だったのだ。
{あの人…}
「空戦隊の訓練には、飛行、近接格闘、必殺技の3ステップがある。最初に覚えてもらうのは飛行だ。2Fの飛行訓練場に、練習用のジェットパックとプロテクターが用意されている。各自、装備して訓練場に並べ!」
《はい!》
第三隊の生徒たちは、声を合わせて返事をした後、ミーティングルームを後にする。エリカは、命を救ってくれたミリアに感謝の気持ちを伝えたかったので、生徒たちが完全に退室してから動き出す。
「み、ミリア隊長!」「ん?…その青髪…。お前はあの時の子か?」
「…あ…あの…。あの時はありがとうございました…」
ベレッタの件もあり、申し訳なさと緊張から目を反らしながら一礼する。
「…ベレッタさんの事で、謝りたくて…その…」
「名前は、エリカと言ったか?」「は、はい!」
「聞いてるよ、ベレッタの墓参りにも言ってるそうだな。あの時、お前が取った行動は間違えじゃない。母親を、一人の人間を救おうとしたんだ。勇気がある行動だったよ。私こそ、見向きもせず戦友に駆け寄ってすまなかった…」
「ミリア隊長…」
「志願した動機は聞かない。ようこそ空戦隊に。まぁ、せいぜい頑張ってくれ」「は、はい!!」
エリカは敬礼して、飛行訓練場へ向かった。
ミーティングルームに一人残ったミリアはふと考える。
{ベレッタ…。あんたが守ったあの子が、空戦隊に入ったよ。まったく、運命はどこまで残酷なんだろうな…}
14:30 飛行訓練が始まってから1時間が経過していた。
背中に背負ったジェットパックを意識で操るという未知の間隔で、安定して飛べる者は数少なかった。エリカも一瞬浮けるがすぐに落ちてしまう。
隣で練習していたアネットは、コツを掴んだようで、徐々に安定してきていた。
「よっ!おっ!」「アネットさんすごい!私全然できないよ…」
「意識をジェットパックに集中させて、こう!!」
完全にコツを掴み、空中で一回転もできるようになった。
離れた場所で、一人黙々と練習していたツインテールの女性も飛行を習得していた。
{何よ。案外簡単ね。あの青髪の子、尻もちなんか着いちゃってダサ}
その時、意識が散ってしまったのか、ジェットパックが暴走する。
制御が効かなくなり、天井目掛けて猛スピードで飛び上がってしまう。
「な、何よこれ!!嫌ぁぁああ!!」
危機を察知したミリアは、自分のジェットパックを装着して、ツインテールの女性に飛び向かう。天井すれすれの所でミリアに抱かれ衝突は免れた。
心配そうに遠くで見守るアネットとエリカ。
「集中力が乱れるとあぁなるんだな…」「でも、無事で良かった」
「さっきの天罰だなありゃ」
アネットは飛行練習を再開する。
17:30 ミリアの個人指導も入りながらではあるが、飛行術をマスターした生徒もちらほら出てきた。エリカもようやく安定して浮けるようになった。
「う…な、なんとか浮けるようになったよ…アネットさん」
「お、ようやくアタシに追いついたな」
「よし!今日はここまでだ。みんな、飛行術の基本は覚えたな!明日は、空で実践だ。各自しっかり食事をとるように!」
ミリアの掛け声で、今日の訓練が終わった。
20:10 生徒たちは、食事と入浴を終えて各自の部屋で休息を取っていた。
エリカは、母親と電話をしているようだ。
『エリカ。今日はどうだった?』
「うん。まだ全然ダメだけど、優しくしてくれる友達ができたよ。身体のことは心配しないで。このためにトレーニングしてきたから」
『そう。自分で選んだ道だから止めないけど、私はいつもあなたを思っているからね』
「うん。ありがとう。…偶然なんだけど、私が配属された小隊の隊長が、あの時助けてくれた女性だったんだ」
『あら、そうなの。ちゃんとお礼を言わなきゃね』
「だから私、頑張るよ。立派な空戦隊になって市民を守る為に!」
エリカは、母親との電話を終えて就寝した。
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