依頼

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「おっはようございまーす!いつでも元気なギルド職員、ラムレットちゃんでーす☆」 突如として、声を掛けてきたのは、クリネの顔見知りのギルド職員だった。 猫族(ケットシー)特有の耳に、ギルド職員の制服。雰囲気によらず、猫少女が来ている赤い制服は立場の高さを表している。 「あ、ラムレットさん!僕に何か用ですか?」 どうやら、その様子を見る限り、ラムレットとルクは知り合いのようだ。 いつの間に?と聞きたくなったがぐっとクリネは堪えた。 「聞いてくださいよ、ルクさん!ルクさんになんとなんと指名依頼が来ているんです!」 「凄いじゃないですか!ルクさん!」 思わず大きな声が出てしまった。 だが、彼の反応は……… 「…………それで?」 「「え?」」 大変淡白なものだった。 ルクとしては、なぜ目の前の二人がそんなにも驚いているのか分からなかった。 指名と言うだけで、今まで受けてきた依頼であることには変わりないのに。 クリネとラムレットとしては、なぜ目の前の彼が「指名依頼」という名誉なものが来ているというのに平然としていられているのが信じられない。 ハンターの中でも、ある程度長い間ハンターをしているクリネであっても、数える程しか指名依頼が来たことは無い。 それなのにルクは駆け出し中の駆け出しの身であるのにも関わらず、 「指名依頼が来るって、もう異常ですよ!」 「へぇ……」 「なんでそんな他人事なんですか!?」 ____指名依頼。 それは、単にギルドに寄せられる一般の依頼とは大きく異なる。指名されたハンターは、指名主から絶大な信頼を得ているケースが殆どだ。 さらに、それ相応の額が、成功時だけではなく前金でも払われる。額によっては前金だけで1年遊んで暮らせる依頼もあったという。 そのようなことを彼に説明すること、数分。 「指名依頼ってそんなに凄いんですね。僕知らなかったです。それで、指名主とやらはどなたなんですか?」 「えぇーっと確か……このスサム区の区長の1人娘の……」 「ベルルカ·イルサミちゃんじゃないですか?」 「そ、そうですけど……あ、やっぱりお知り合いだったんですね」 「はい、昨日誘拐されそうだったんでたすけてあげたんですよ」 「ええっっ!?」 もう昨日といい今日といい、彼は周囲を驚かせ過ぎだと、クリネは思った。 「えっと、誘拐って一体どういう……」 明るいことが取り柄のラムレットでさえ、完全にルクに調子を崩されてしまっている。 それもそうである。区長とはその区で最も権限を持つ人物を指す。 しかも、個々が独自の進化を遂げているため、区という名の国家の王のような立ち位置に区長はある。 その娘となれば、言わずもがな、その地位は高い。 因みに、イルサミ区長の治めるスサム区では、魔導を応用した機械業が盛んである。 それを専門とした大学も沢山ある。卒業生の殆どは、魔導工場へ就職する。そのため、高性能な武具や装飾品が数多く生産されている。 閑話休題。 ルクの説明は続く。 「たまたま路地裏歩いてたら、俺と同い年ぐらいの女の子が、男の人たちに囲まれてたんで、助けたんですよ」 さも当たり前だと言いたげなルク。流石に二回目になってくるとラムレットも多少は落ち着いてくる。 「と、とにかくギルドに来てください。そこで詳しい内容をお話しします。後、その誘拐の話を聞かせてください。」 「分かりました。では、装備に着替えてきますね」 「えっ、着替えてきます、ってまさかルクさん………もう家をお持ちなんですか?」 「勿論ですよ」 「「_______」」 この後も、驚くことがありすぎてなかなか話が進まず、ギルドに着いたらそこで待ち構えていたギルド嬢に揃って怒られたのは、また別の話。 クリネは、興味本位でルク達についていったことを深く後悔した。
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