家族じゃなくても大好き

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家族じゃなくても大好き

「紅蓮様!ご無事で何よりです」 紅蓮ちゃんをお父さんとお母さんに紹介すると お母さんは感極まったように涙を浮かべた。 この子、ホントにわたしの妹なんだろうか。 わたしは未だに信じられず紅蓮ちゃんを横目で見た。 それに、お父さんとお母さんが実の両親 じゃないなんて……。 ショックでわたしは俯いた。 「お会いしたかったです、紅蓮様」 お父さんが紅蓮ちゃんの手を握る。 「二人とも元気そうで良かった」 紅蓮ちゃんが初めて優しく微笑んだ。 禄さんは手拭いで溢れる涙を拭っている。 紅蓮ちゃん、笑ったー?! 可愛い!! って、それよりも。 「お父さん、お母さん、 わたしが地獄の王女ってホントなの?」 真剣な口調で言うとお母さんは眉を八の字にした。 お父さんは私から目を逸らしている。 「ええ、本当よ」 そんな。 「なんで、そんな大事なこと黙ってたの!!」 生まれて初めて大きな声で怒る。 「ごめんな、蓮花。 もう少し大きくなったらって思ってたんだが……」 お父さんが苦々しい様子で言う。 「そうね、こんなにも早く紅蓮様がいらっしゃって、事実を知らせることになるとは思わなかったから……ごめんなさいね……」 お母さんが悲しげに微笑む。 「……わたしはまだ子どもだから……?」 「え?」 「子どもだから黙っていたの……? ひどいよ。」 それでも話して欲しかった。 気まずい空気を打ち破ったのは、紅蓮ちゃんだった。 「バカか、お前は」 は? 今、バカって言った?? キョトンとしていると紅蓮ちゃんは言った。 「お前のためを思って黙っていた に決まっているだろう」 「紅蓮ちゃんにはわかんないよ! 元々地獄の王女様だってわかってるんだもん。わたしと同じ境遇じゃないんだから!」 紅蓮ちゃんはため息をついた。 「これは、言いたくなかったのだがな」 「紅蓮様! まさかあのことを……!?」 禄さんが慌てたように目をキョドキョドさせる。 紅蓮ちゃんは禄さんを無視して口を開いた。 「私たち姉妹の母親、蓮実(はすみ)は、殺されたんだ」 「え?」 わたしの実の母親が……殺された? サッと血の気が引いていく。 「ど、どういうこと?」 お父さんは悔しそうに唇を噛み締めて、 お母さんは悲しそうな顔をした。 禄さんは泣くのを我慢するように天井を見上げた。 みんな、なんでそんな顔をするの。 不安が煽られる。 「お母様は、王宮に襲撃してきた亡者に、私たちを守って殺されたんだ。その後、お前は使用人を連れて 行方不明になった。あの頃、お前は五歳だったから覚えていないだろうが」 沈んだ口調で言う紅蓮ちゃん。 「そんな」 わたしは言葉を失う。 「だから、カスミとレイジは黙ってたんだ。 親を責めるな」 静かに諭すようにわたしを見つめる紅蓮ちゃん。 「蓮花、黙っててごめんなさい。 だけど、わたしたちはあなたを本当の娘だと思って 育ててきたわ。もちろん今も。……蓮実様を…… あなたのお母様を守れなくてごめんなさい」 お母さん……。 顔を歪ませるお母さんに一瞬で怒りは消えた。 そしてお母さんに抱きつく。 「ううん、お母さんは悪くないよ。 わたしこそ怒ったりしてごめんね」 お父さんが近づいてきた。 「蓮花、俺もお前のことを大事な娘だと思ってる。 それだけは知っておいてくれ」 わたしはお父さんも抱きしめる。 「わたしもお父さんとお母さんのこと、大好きだよ」 涙声で言う。 お父さんとお母さんは本当の家族じゃないけど 私を育ててくれた。 沢山の愛をくれた。 本当の家族じゃなくても大好きだ。 わたしの中では二人とも家族だよ。 私は二人を強く抱きしめた。
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