15 銀髪のヒーロー

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15 銀髪のヒーロー

 明け方、待合室で昴太がウトウトしていると、頭の中で声が聞こえた。 『もう大丈夫』 ハッと目を覚ます。  同時に執刀医が駆け込んでくる。 「翔くん、持ち直しました! 奇跡です!」 香奈を揺り起こす。 「もう心配いりません! 翔くん、頑張りました!」執刀医も興奮気味だ。 「先生ありがとうございます!」  そのとき、待合室の窓の外に強烈な光が射した。昴太はもしやと思い、病院の外に駆け出す。見上げると、楕円形の物体がキラキラと朝陽を透過しながら、遠ざかる。 昴太は見上げながら物体を追って走る。  二十分ほど走り息が上がったころ、昴太は広場に着いていた。空から一筋の光が一直線に木の陰に射し、すうっと消える。  昴太は光が射した場所に走る。  肩で息をしながら、そこが、秘密基地の場所だったことを思い出した。  しゃがみ込み掌で土を払うと、錆びたクッキーの缶が出てきた。 「まだ、あったんだ……」 驚いて、錆び付いた蓋を、力一杯開ける。  飛行機図鑑、綺麗な石、珍しい王冠。 懐かしい宝物はそのまま残っている。 ただ、ウルトラマンの人形だけが、宝箱から消えていた。  昴太が空を見上げる。 「ヒーローはきみだったね。アトラス……」  はるか上空でキラリと光った物体が、すうっと光の尾を引いて、雲の彼方に消えていった。 — おしまい —
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