第一話 孤高の王

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「そんなことより、今夜から羊族の国は二週間カーニバルだ! ふわふわの毛並みのかわいこちゃんが俺を待ってる!」  俺を捕まえた男達は三匹。一匹は灰色の毛で耳が大きな蒼い目の男、一匹は栗毛の長毛で耳が垂れている。残る一匹は茶と黒が混ざった斑模様の毛で牙が鋭い。さっきからうるさいのは斑の毛の奴だ。 「お前、村に奥さんいるだろ? いいのか?」 「良いんだよ! 羊族はセックスと羊毛だけで生活してる、つまり身売りしてナンボの下等種だ。寧ろ奴らのために種付けてやるんだから、褒められてもいいくらいだ」  羊族と犬族の関係がどういうものなのか、俺は何も知らない。けれど、この男の言草は、余りに侮蔑に満ちていて、気分が悪くなるものだった。 「俺、羊族のカーニバルに参加するの初めてなんだけどさ。初代の王様の誕生日に催される国をあげたお祭り、ってことしか知らないんだよね」  栗毛の男が首を傾げる。「知らないでこの仕事引き受けたのか」と斑の毛の男が溜息を吐く。 「発情期(ヒート)だよ。羊族はこの二週間に事前に抑制剤を使って、発情期(ヒート)が来るように合わせるんだ。カーニバルの時に孕んだ子は特別で、偉大なる王の加護を受けられると信じてるからな」 「えーっ! じゃあ、Ωだらけの羊族がそこらじゅうで発情してるってことっ?」 「そういうことだ!」  男は耳をピンと立てて、尻尾を高くあげたままぶんぶんと小刻みに振る。 「この時期は安く買えるし、世界中から獣人が集まるから、処女もカーニバルに合わせて水揚げすんだよ。上手くやりゃあタダでもデキるって話だぜ? その上、子供を孕みたいヤツがゴロゴロ居るから中出ーー」 「見えたぞ」  ほとんど会話に参加しないでいた灰色の毛の男が斑の男の台詞を遮るように言った。尻尾をぴたりと止め、明らかに不愉快そうに灰色の毛の男を見上げる。
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