最終話 気高き羊王と運命の番

14/16
1250人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
 アルを心配させまいと痛みに耐えながらベッドから降りる。そして足元に落ちていた服を拾い集める。もはやどれが自分のだか、生地や形が似ているのか分からない。  と、自分の部屋に走ってくる足音が聞こえたかと思うと、部屋のドアが強くノックされる。 「ロポ! 起きているか? 陛下が何処にも――」  ドアが開いて、ちょうど正面に居た俺と目が合う。そして、その後ベッドの方に視線を向けた瞬間、顔が硬直した。 「……申し訳ございませんでしたッ!」  と物凄い勢いでドアを閉め、スウードの足音は部屋から急速に離れていった、最終的に階段を下りて行ったのか、一切音がしなくなる。 「ぷっ……あはははっ」  顔を真っ赤にして去ってドアの向こうに消えたスウードを思い出して思わず噴き出してしまう。 「早く服を着て迎えに行ってやらねばな。しばらく戻って来そうにないが」 「ふふっ、そうだね!」  きっと朝食の準備が終わったから呼びに来たのだ。ドアの向こうから、スウードの淹れてくれる薫りのいい紅茶の匂いが漂ってきたから。  身体を拭いて服を着替えた頃、出入り口のドアの向こうに気配がしたので、戻ってきたスウードを広間に招き入れた。  スウードに事情を説明しようとしたけれど、「分かっているから大丈夫だ」と言われてしまった。番になったのだと、彼にはどうしてか分かったらしい。 「今夜、カーニバルの閉幕を告げる式典が宮殿で行われますが……報告は、大臣に任せる通例の形で宜しいでしょうか」  食事を終えた後、スウードがカップに紅茶を注ぎ、アルに尋ねた。 「カーニバルの最後に何を報告するの?」 「陛下と妃候補が番になったことの報告だ。宮殿の前の広場で行われる式典で、国民はその報告を待っている」  アルは紅茶を口に含んで、スウードの代わりに答える。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!