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カップを下げて、厨房に向かうとΩだろう羊族の者達が働いていた。
「湯は沸いているだろうか。陛下が紅茶を淹れて欲しいと」
僕を見て一瞬萎縮したようだったが、話し掛けると近くにいた若い女性が、「ティーセットと茶葉はこちらです」と食器棚を示して、ケトルを手渡してくれた。
「ありがとう」
「……王妃様が貴方のお話をよくしてくださっていました。もし会ったらとても良い方だから、仲良くして欲しいと」
「ロ……王妃が」
つい癖で名前で呼びそうになった。しかし、ロポが僕の話をしてくれていたのは、αである僕が働きやすいように彼が気を遣ってくれた……とは思わないが、ロポが分け隔てなく城の者たちに接する性格で、自然と僕のことを口にしてくれていたからこそ、今の彼女の親切がある。それはロポに感謝しなければならないだろう。
紅茶を淹れて、陛下の書斎にお持ちすると、中から楽しげな声がしてドアを開けた。
「失礼致し──」
「スウード! 部屋から出て来れたんだ!」
とロポが走り寄ってきて、あわやティーセットを載せたトレイをひっくり返すところだった。
「良い匂い! あとで俺にも淹れて!」
「ああ、分かった」
陛下に紅茶を出した後、ロポが話がしたいと言うので仕事をしている陛下に遠慮しながら話した。
城での生活がほとんどで、食べ物の何が美味しかったとか使用人の誰々がどうしたとかいう話だった。
「あっ、そうだ! 泳いでスウードに会いに行った日にアルに子作りしようってちゃんと言ったよ! そしたらそれから子作りしてくれるようになって、昨日もした!」
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