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ちょうど紅茶を口に含んでいた陛下が、噴き出し、書類に紅茶が飛び散る。
「だ、大丈夫ですか!」
慌てて持っていたナプキンで口元と、書類を拭った。しかし、こんなに動揺する陛下を見るのは初めてだ。
「ロポ、そういう話は夫婦や恋人との間でするものなんだ……! 他人に聞かせるものじゃない!」
「そっかあ、ごめんアル。スウードが相談に乗ってくれたからつい言っちゃった」
顔を熱くしている僕を陛下が何かお思いの様子で見上げる。このままでは助言をしたことがバレてしまう。
「……何の話だ?」
「そ、そろそろロポの分の紅茶を淹れてきます!」
半分逃げるように書斎を後にした。あれ以上あの場に居たら追及は免れなかっただろう。
しかし、二人の側にまた居られるのだと実感が湧いてくると、僕が居ていい場所がここに在るのだと喜びを感じる。
僕を側に置いてくれる二人ために、少しでも役に立てるように、一層励みたいと思った。
城で働き始めて数日ほど経った頃。僕は塀の中に入れたら行きたいと思っていた場所に向かった。
それは、僕が生まれた場所──娼館がある花街だ。αである以上、本来近付くことは避けたい場所だが、抑制効果のある実の摂取で可能になった。
今もその建物があるかは分からないが、自分がどんな場所で生まれたのかを見てみたかった。もし当時のことを知っている者が居たら、母のことを聞いてみたい。そして──何処の誰かも分からない、父についても。
仕事を終えた後、夜間に一人城を後にして娼館が立ち並ぶ地域に足を踏み入れた。
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