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城内の使用人に充てがわれた自室に入り、ようやく落ち着いた……はずなのに、何故だか胸がざわざわと騒がしい。
持ち去ってしまった、手の中にある腕輪の赤い石を見詰めて、ルシュディーと名乗った青年のことを思い出す。
──あんた、おれの運命だろ!
赤銅色の瞳が、僕を捉えて離さない。何故、と自らに問う度に、解っているはずだ、と心の声がする。
──運命。
そんな奇跡が、僕にも起こり得るのだろうか。この広い世界で、ただひとりのひとに逢うなんてことが……
もう一度会ったら、その時に──真実を知ることになるだろう。
腕輪をベッドサイドの棚の上に置いて、深呼吸する。ふと窓の外を見上げると、星が瞬く夜空に、半分欠けた月が昇っていた。
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