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番外編② 愛を知らない犬と夜の羊
あれから、二週間が経った。
この腕輪を返さなければ、早く店に行かなければと思うのに、あと一歩勇気が出ない。
僕に「運命」と言ったルシュディーという青年は、本当に「運命の番」なのだろうか。
抑制剤を常飲しているせいだろうか。運命の番であればはっきりと知覚できるというが、そうかもしれないという思いはあっても確信がない。
陛下とロポの場合もそうだったようだが、陛下は明確に「運命の番」だと認識した。しかし、ロポは知識が無かったのも相まって気づくことがなかった。
花街に行ったというのもあって、陛下やロポにも話を聞くことができずに、時間だけが過ぎていった。
「スウードさん、あんな高い石のついたブレスレットを置きっぱなしにするなんて無用心ですよ!」
清掃係の羊族の女性Ω、サーラが廊下で会うなり少し怒ったように言った。彼女は主に使用人の使う施設の清掃を担当している。
「あれはそんなに価値の高い物なんですか?」
「知らないんですか? ルベライトですよ! またの名をレッドトルマリン! 犬族の国でしか採掘されない上、昨今採掘量が減少して市場価値が上がってるんです! それもあの石は最高ランクの五カラットですよ!」
持っていた箒の先を剣の鋒のようにして僕の鼻先に突きつけながら詰め寄られ、思わず後退る。
「く、詳しいんですね……」
「伯父が宝石商でして、将来商いを継ぐつもりなんです。なので、詳しいのは当然です!」
サーラは腰に手を当てて誇らしげに胸を張った。
しかし、それほど高い宝石だとは知らなかった。それなら尚のこと早く返さなければ。
「価値を知らないってことは頂き物ですか?」
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