まさに取り合いでした。【後ろの理解者・ep.7】

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 霊魂にそぐわぬ日向ぼっこをしながら室内に目をやると、愛しの紫音の姿が見える。詩乃と似た傾向のキャミソールに短パンという服装だが、あくまで清楚。  気を抜くと下品一直線な詩乃に対し、例え巨大な虎がプリントされたジャージ姿であっても(何があっても着ないだろうが)、清純でスノッブな雰囲気が漂うのが紫音だ。  紫音はiPhone6S Plusで電話中。小さな顔と手には不釣り合いに大きな端末を耳に、そのまま窓際まで歩いてきた。 「あ、紫音だ❤️電話してる。キャミ似合うな、今日も可愛いな」  怒られたこともすっかり忘れ、詩乃はデレデレとだらしない顔で紫音に近づく。微かな笑みを浮かべて話す紫音は、無表情な彼女としては存外楽しそうだ。 「笑ってる?へへ、ちょっと聞いちゃうくらいは…どれどれ」  詩乃は悪い顔で、紫音の通話を聞こうと試みる。普段の紫音なら、詩乃が近くにいれば存在を感じ取ることができるのだが、電話に集中する今は気づかないようだ。
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