恐怖の遺言

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恐怖の遺言

カブは 成虫になって 約一か月は 腐葉土の奥の蛹室(ようしつ)で 地上を夢見た 地上に出て 約一か月 カブは  危険回避術を マスターしつつ 運を 自分の味方にする方法を 考えていた ある夜 もう体が傷だらけになった 年老いた ♂カブトが  カブが なわばりにしている 樹皮がめくれたポイントに 訪れた カブが出て行くと 「すまない 少し 休ませてくださるかな」 その ♂カブトは 丁寧に挨拶してきた 「樹液を吸わせていただけるだろうか」 カレは 力なく カブに尋ねた 「どうぞ 樹液はみんなのものです」 カブは やさしく答えた 樹液を吸った 年老いた♂カブトは カブにこう言った 「交尾するたび寿命は縮む 覚えておきなされ」 「あなたは何回 交尾できたのですか?」 「今日で8回じゃ・・・」 「すごい!よくそんなにチャンスありましたね」 「だが ワシはまだ地上にでて20日目だ!」 「ええっ?そうなんですか」 「交尾は体力を恐ろしく消耗する」 そう語った ♂カブトは 突如 力尽き 木の下へ落下したのだった なんという恐怖の遺言! ※参考文献「共生のひろば」14号 2019年 『カブトムシの交尾回数による早期死亡率の変化についての研究』 中本 南 氏
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