2人が本棚に入れています
本棚に追加
青春の落伍者
大学とは人生の大きなターニングポイントを迎える地点だ。なぜなら、この大学という新天地で、これまでの汚辱に満ちた暗い過去を捨て去り、初々しく爽やかで希望に満ちた青春を謳歌しようと企てるからだ。
哀れな大学受験の受難者たち。
彼らの多くは高校時代、甘酸っぱい青春の味を舐めることもできず、その代わりに教科書やら、参考者やらを舐め回していた。彼らは映画やドラマ、アニメを見るたびに、どうして自分のハイスクール・ライフはこんなにも無味無臭なのだろうかと疑問に思う。そして、その疑問は苦悩へと変わり、やがて、復讐へと変貌するのだ。そう、青春への復讐だ。
若者たちは目の前の受験勉強に勤しみながら、頭の片隅で、憧れのキャンパス・ライフの夢を膨らませ続ける。そして、見事自身が志望する大学に入学し、高校時代から頭の片隅で温め続けた幻想を胸に、大学構内を闊歩する若者の多くが夢破れる。
彼らはどれだけ怠惰で惨めな大学生活を送ることか。多くの若者達が大学において、青春の路頭に迷い、人生の袋小路に入ってしまう。迷走に次ぐ迷走。
大学生とはそれほど恐ろしい身分なのだ。彼らは人生の猶予期間を棒に振りまくる。そうして、大人になっていくのだ(あるいは、幼児のようになっていくのだ)。
この物語の主人公、谷口サトシもまたそうした青春の落伍者の一人であった。
最初のコメントを投稿しよう!