壱 厄病神と死神

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「あの、すみません。少しお尋ねしたいのですが」 きっとこの村には食料が殆どない。それに、貧しい村には旅人を狙った強盗も多い。ここで長居は難しいと読んだ萩は、さっさと切り上げる為、早速その男へ声を掛けた。 「実は“赤血神社”へ参拝しに来たのですが、道に迷ってしまって」 いつも不愛想な萩だが、仕事は別。この時の申し訳なさそうな笑顔は、忍びの実力を物語っていた。 「あ、赤血……!? 悪い事は言わなねー! あそこには近付くな!」 “赤血”と聞いた瞬間、生気の無かった男の目が瞳孔を開き、全身が力むように肩が上がった。 「あそこは呪われてる! その祟りのせいで、村は……」 「祟り?」 話を引き出す為に会話の単語を復唱する。本心では村の怪談話や言い伝えが肥大して、神遣い等と言われているだけだと考えていた為、それに繋がる話を適当に聞いて帰るつもりだった。 しかし、村人が口にしたのは、単なる言い伝えでは無かった。
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