壱 厄病神と死神

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「十年前、赤血神社に居た神主がとんだ金狂いでな。神社に祀られてる神様がお怒りなさって、この村に雨が降らなくなっちまったんだ…… そのせいで村はこの有様だ」 ――十年前? やけに最近だな…… 普通、言い伝えなら具体的な年数等出てこない。しかし、十年前ならほとんどの村人達が金狂いと言われる宮司の顔を知っているだろう。そして、噂とは違う決めつけた言い方にも違和感を抱いた。 「神様を怒らせたとは…… 余程の事をされたようですね?」 「具体的にはわかんねーけど…… 他所から来た新しい神主様がそう言うんだ! 間違いねぇ!」 その話を信じたふりをしながらも、厄介な事が萩の頭に浮かぶ。 蛍原の情報が正しければ、“神遣い”を知っているのは限られた人間のみ。あの巻物が何年前の物か定かでは無いが、今居るのが『他所から来た新しい神主様』となれば、赤血族と関係無い可能性が高かった。 「恐ろしい話ですね…… 前の神主さんは、さぞ罰が当たった事でしょう。今はどうなさってるんですか?」 「今? 十年前に村人全員の前で火あぶりにされたよ」
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