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しょうもないこと
枝の上にエナガが二羽。羽を広げたり鳴き声を上げたりと、威嚇しあっている。
湿気を多分に含んだ空気から逃れるため、山登りをしていた道中、鳥の鳴き声に気づき足を止め、見上げたら争う姿を見つけた。
雀よりも小さな体躯に反して長い尾羽を持つエナガ、昔読んだ本だと、小規模な群れでなわばりを作るはず。群れの仲間ではないのか、ただただ喧嘩しているのかそれはわからない。
どちらにしても、餌を得る場所を取り合う二羽、空腹という不利益を被らないように抗いあっていることになるのか。大変だな。
生きるために必死な鳥のどちらにも、心の中で「がんばれ」とエールを送り、私は再び歩き始める。
鳥が取り合い、言葉遊びにしては少し陳腐か。でも、せっかくだから、来週会社の後輩に言ってみよう。
恐らく「何言ってんすか?つまんないこと言ってないで仕事してください」と返されるだけだろう。
切れ長の目を細く、眼光鋭い視線とともに辛辣な言葉で心を刺されるかもしれないが、それもご愛敬。否定しておくが、私はマゾヒストではない。
そこでふと、山道の土や岩を踏みしめながら、今の思考を鼻で笑ってしまった。
久々の休暇、利益とか成果を取り合うことが日常の会社から離れたくて山まで来た。それなのに、争いに巡り合い、それを伝える先で真っ先に思い浮かぶのが会社の人間とは、自身の巡り合わせや交友関係の狭さがおかしく、自嘲気味に笑ってしまった。
山道特有のジグザグ道、今朝から何度目の曲がり角か分からない角の切り株に腰掛ける。額の汗を首にかけたタオルでぬぐいながら、空を見上げる。太陽の位置は天頂まであと2~3時間といったところ。どおりでお腹が減るはずだ。
腹が減ったところで思い出すのが、昨日の飲み会で最後まで皿に残っていた配慮の塊、唐揚げ。卑しいと思われてしまうと考えてしまい、手を伸ばせなかったが、食べたかったな。
「私にはもったいない、どうぞ」
「いやいや、それこそ私にもったいない、どうぞ」
先ほどの取り合いとは、真逆の意味の譲り合いの会話。しかし、一時の利益により、それに付随する不利益(卑しいと思われる)を押し付けあっていたのではないだろうか、などと無用に思考を巡らせる。どうぞを二回繰り返す、伝統芸のごとく、嫌なことをふりあっていただけだったのだろうか。言い換えれば、不利益を避けた結果(利益)を取り合っていただけ。結局取り合っていたことになる。なんだか、むなしいな。
そこで「黙って食え、食いたいなら食えばいいでしょ!」と、譲り合っていた私をしり目に、さっそうとかっさらっていった格好いい後輩を思い出す。
今の考えを言ったら恐らく「しょうもないこと考えてないでさっさと働け」と、先輩後輩関係なく、そんなことを言われるだろう。
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