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「止みませんねえ…」
「ええ」
空を見上げながら、ふたりは語らう。
今日も明日も。
雨が降り始めたのはもういつのことか分からない位前のことで、これが毎日の挨拶と化しているほどだ。止まない雨はないと言ったのはいつの時代の人間だろう。ふたりは雨以外の天気を知らなかった。だからこの会話に挨拶以外の深い意味は別段ないのである。
長い長い雨。
その永遠とも思われる時間の中に、人間は生きていけなかった。
「止みませんねえ…」
小さな墓の前、花を供え、老人は言った。
墓石は乾いていた。
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