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それ以来順調だった旅も、気まぐれないたずら風に阻まれてしまった。
「びょう、びょう、森の奥に吹き飛ばすぞ!」
「それだけはやめて!」
アリーの願いも虚しく、いたずら風はアリーと種子たちを森の奥へと吹き飛ばしてしまった。
「きゃーーー」
アリーたちはあっという間に森の奥。そこは薄暗くて不気味な場所。
大きな木々が見下ろすように両手を広げ、太く張り巡らした根っこはアリーたちの行く先を阻むように上下左右にうねっていた。
「アリー、ここって近付いてはいけない『バケモノの森』?」
種子に聞かれ、アリーはコクンと首肯いて、その身をぶるりと震わせる。
そう、ここは決して近付いてはならないと言われた『バケモノの森』なのだ。
葉擦れの音がまるで「出て行け」と言っているように聞こえる。
恐怖に肩を寄せ合い、みんなで仲間の手を握り合った。
「みんながいれば大丈夫。怖くない。怖くない。へっちゃらさ!」
カチカチなる歯の隙間からお守りのように言葉をつむぐ。
バサバサと頭上を真っ黒なカラスが飛んでいくのだが、幸いアリーたちに気が付いてはいないようで、ほっと胸を撫で下ろす。
今が、朝なのか、昼なのか、夜なのかすら分からず、ここが北か南かも分からないまま、ひたすら森を進み、アリーたちはいつの間にか気付かず禁域に足を踏み入れていた。
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