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深い深い暗闇からアリーは身を起こす。ここは屋内だろうか、風がない。木づくりの素朴な小屋のようである。そして周りを見回して心が跳ねた。種子たちがいない。
「みんな、どこ?」
静かな呼び掛けに答える声はない。代わりにアリーの右側にあった大きな扉が、ギギギと音を上げてゆっくり開いた。
【お嬢さん、起きたかい?】
それは森の真ん中で聞いた闇の声。
続いてその後ろから「キャッキャ」と笑う種子たちの声が聞こえて来た。
【みんなで水浴びをしているよ。妖精もこちらにおいで】
そう言うと闇はのそり、のそりとどこかへ行ってしまった。
アリーは背中の羽をはためかせて一目散に種子たちのそばに飛んで行く。
「あ、アリーだ!」
「アリー、おはよう! 見て見て!」
そう言って大きな桶に張られた綺麗な水の中で種子たちは元気に遊んでいた。
どうやらあの闇は悪いやつではないらしい。
【お嬢さんは水より、蜜がいいかい?】
そう言ってどこからかまた闇が現れた。
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