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雨が降っている。
雨は、きらい。
でも、雨が降らなかったら、
困る人もいるから、
だから私は、
雨が降りますようにと、
天に祈りを捧げる。
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あれは、3年前。
メイド「ふう、お掃除終わった」
ドワーフ「なんじゃ、なんじゃ、この床は」「隅にホコリが残っておる」「やり直しじゃ」
メイド「は、はいっ!すみません」
あーあ、いつもこう。
もっと大目にみてほしいなあ・・・
通りがかりの王子「あれ?君って、いつも真面目に掃除しているよね」「ありがとう、助かるよ」「この国を支えているのは、君のように自分の果たすべき仕事をしている人なのだろうね」「君に出会えて良かった」
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ドワーフ「はあ? 王子様からプロポーズされたじゃと? じゃ、仕事は止めるんじゃな?」
メイド「あ、いえ、お断りしようと思っているんです」「だって、私、親もいませんし、ウェディングドレスとか用意するお金もありませんから」「だから、私、掃除の仕事を続けようと思います」
ドワーフ「あほ。お前が掃除すればするほど、城が汚れるんじゃ。さっさと、仕事止めてまえ」「今日は、もう家に帰れ」
メイド「・・・はい」
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だめだ、私。
何をやっても、不器用で、失敗ばかり。
(ドンドン、ドアを叩く音)
メイド「はい」
配達人「お届けものです」
メイド「え? 何でしょうか?」
配達人「お城の王子様からです。ウェディングドレスお仕立て券です。お店にお持ち頂き、ドレスをあつらえて下さいと、伝言をたまわりました」
メイド「王子様が、そう・・・」「ありがとうございます」「そうさせて頂きます」
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結婚式、前日。
メイド「お世話になりました」「あら? ドワーフのおじさん、姿がみえないのですが、お休みですか?」
メイドA「・・・あー、あなたには黙っているつもりだったけど」「亡くなられたの。雨の中、町中を掃除していて、肺炎でね」
メイド「え?」
メイドA「ウェディングドレスの仕立て券、高いのよ。全部、あの人が手配したの。その支払いのために、仕事を山ほど引き受けて」「気がついてなかったの? 王子様の散歩コース、あの人、いつも、あなたに仕事を割り当てていたの」
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3年後。
雨が降っている。
私は祈る。
王妃として、この国の安寧と繁栄を。
国民の幸せを。
作物が、無事に収穫できるようにと。
ただ、祈る。
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