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「最近、つくづく思うんだけどさ」
昼休み、俺は窓の外を見ながら後ろに座っている友人に声をかけた。
「なんだよ?」
本を読みながらも、こいつはちゃんとこちらの話は聞いている。
「学生って、世の中を一番冷静に見れる立場だと思うんだよ」
「急にどうした?そんなこと」
「んー......なんか急に思いついた」
「せっかくの昼休みに変なこと思いつく奴だな、お前は」
「まあな」
「で、なんで急にそんなこと思いついた?」
なんだかんだ言って、話に乗ってくれるのがこいつのいいところだ。
「だってよ、働かなくてもとりあえず生きていけて、休みの日には何してたっていいんだ」
「土日まで部活があって休めないオレには関係ない話だな」
「まあでも、サボっても怒られて、進路が辛くなるくらいで即死ぬことはないだろ?」
「まあ、そうだけども」
「でも大人になったら仕事をサボれば金が入ってこない だからまあ、言ってみれば金に支配されちまうんだよ」
「でもそれならオレらだって同じだろ?別に金が無限に湧き出るわけでもないし」
「まあ、そうだけどな でもよ、俺らの金が無くなっても死にゃしない だから、まあ金の呪縛がそこまでかかってないんだ」
「分かるような分からないような話だな」
「とにかく、この世の中ってもは結局金が8割か9割だ 気持ちだけでどうにかなることなんてほんのちょっとなんだよ だから金の呪縛がかかっていればかかっている程、現実的にものを見ているように見えるし、そうじゃないやつは夢物語を語ってるって言われる」
「...反論したかったけど、正直その通りだな 結局は金で物事は動いてく」
「でもその夢物語って、金の呪縛が入り込んでないからな 公平っていうか、普通そうした方がいい、っていうものにはなりやすいんだよ」
「じゃあ夢物語の方で物事を進めた方がいいんじゃねえか?」
「出来るなら、な でも現実はそういかないんだよ」
「金のせいか」
「そう、もちろん生きる為の金なら俺は文句は言わないし、むしろ持ってて欲しい でも、そうじゃないのにとにかく金を求める──それが金の呪縛の悪いところだ」
「...じゃあ、どうすりゃいいんだ?金に囚われたまま、世の中は動いてくのか?」
「ほんとなら、上に立つ人間がそうならないように世の中を動かすもんだろうけど...現実はそう上手くいかない」
「金の呪縛を受けてない大人はいないのか?」
「どっかにはいるかもな...ただ、少数派が声を上げる場なんてない」
「このネットが発達した世の中で、か?」
「ネットは自由な場──な訳ないだろ?特異な意見があればすぐ膨大な量の反論意見...いや、そう見せかけた誹謗中傷が集まるあんな世界」
「...でも、賛成意見も来るだろ?」
「1割の賛成意見なんか、焼け石に水だろ」
「......なあ、ちょっと聞いていいか?」
「なんだよ?」
「お前は金を悪って言いたいのか?」
「いや、違う 金自体は悪じゃない ただ金に取り憑かれて、それだけが物事の基準になってる輩が嫌いなんだ」
チャイムが鳴った。次は社会の授業だ。
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