昨日の日常、モノローグのふたり

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-2年になった時、クラス替えで俺と彰はまたしても同じクラスにはなれず、またまた治朗と同じクラスになってしまった。 (…大丈夫。俺と彰は赤い糸で結ばれているからクラスが別れたくらい屁でもないもんね。寮の部屋は一緒だし) 寮の部屋替えは3年間ないから卒業迄、彰とずっと同室だ。 でも、治朗と視線が合う度、俺の胸には複雑な感情が渦巻いていた。 複雑な感情…治朗と視線が合う度に感じる高揚感と背徳感…。 そして、彰に対する後ろめたさ。 後ろめたさを感じる度に胸がドキドキ、モヤモヤして………。 (治朗は俺を好きなんだ) その頃には、それは確信に変わっていた。 それまで視線を感じてはいても話しかけてくる事はなかった治朗が、俺と同じクラスになってから頻繁に俺に話しかけてくるようになった。 話しかけられても、俺は無愛想に返すだけ。 なるべく治朗を避けるようにしていたが、同じクラスになった途端、積極的に俺に近付き話しかけてくる治朗。 それは楽しい昼休みも例外じゃなく。 -昼休み。 それは俺と彰がクラスが離れてからいちゃいちゃできる貴重な時間。 いや。 唯一の幸せな時間と言ってもいい。 その貴重な、唯一の幸せな時間さえ、治朗は邪魔をしてくる。 (治朗の俺を見詰める熱い視線に、彰が気が付いたらどうしよう) 最初の頃はその事ばかり気にして、治朗が俺に話しかける度に緊張していたが、彰が治朗の気持ちに気付く様子はない。 いつもと変わらない彰の様子を見て、ホッとすると同時に少し淋しいというか…………信用されているのは嬉しいけど、少し物足りないというか………。 でも、そんな日々を過ごしている内に、治朗が俺の横に居ることが普通になってきた。 治朗は確かに可愛いし、そんな可愛い治朗に好かれて迷惑に思うヤツなんていないだろう。 オマケに治朗と一緒に居ると、皆に羨望と嫉妬の眼差しで見られる。 その事は結構、俺の自尊心と優越感をくすぐった。 だが、そんな日々の中でも治朗は他のヤツと短期間だが、付き合ったりしているのか、相変わらず色々なヤツと噂が流れていた。 その噂を聞く度、噂のヤツと腕を組んでいる姿を見る度、俺の胸は何故かチリチリと痛んだ。 (治朗は俺が好きなはずだろ?) (何故、そんな奴と付き合っている?) (何故、そんなヤツと腕を組んでいる?) 治朗とソイツが別れたと聞くとホッとする。 -そして、我に返る。 (何、考えているんだ) 治朗が誰と付き合おうが、腕を組んで歩こうが、別れようが俺には関係ない。 (俺は彰が好きなんだから) それなのに、この胸のモヤモヤは何だろう。 「ねえ、次の土曜に遊びに行かない?」 治朗に言われて、ドキッとした。 「……え?」 「皆で」 「…あ…ああ…」 (…なんだ…皆でか…) ホッとしたと同時に、少しガッカリして…そんな自分を心の中で叱咤する。 (…どうして2人きりじゃないと聞いて、ガッカリしてんだよ…おかしいだろ!!) 俺には彰がいるんだから。 (何を意識してんだ…俺は) 「…いいね!…あ、俺、見たい映画があるんだ。それでもいいかな?」 ガッカリした自分を誤魔化す為に、俺はワザとはしゃいだ振りをする。 「なあ、彰………」 彰の方を振り向くと、バチリと視線が合ってしまって、ギクリとした。 (…いつから俺を見ていたんだろう…?) そう思って焦った瞬間、彰がにっこり笑って口を開いた。 「…ごめん、次の土曜日は僕、用事があるから行けないや」 「…あ、じゃ、彰が行かないんなら、俺も…」 申し訳なさそうに謝る彰に後ろめたさを感じながらもホッとしつつ、彰が行かないのなら俺も断ろうとした時、彰に止められた。 「いいよ、樹生は行きなよ。別に用事、ないんでしょ?」 (用事はないけど、彰がいない時に治朗と一緒はちょっと………) 「…いや、でも、彰が行かないなら…」 「僕に合わせる事ないって。せっかく誘ってくれているんだし」 (う~ん…でも、治朗が………) 「…いや………でも……」 「何、樹生らしくないよ。見たい映画があるんだろ?よかったじゃない」 (……しまった……勢いであんな事、言うんじゃなかった………見たい映画なんてないのに……) 「…う、うん……」 いや、よくはないけど…かといって悪くもないし…。 複雑な気分で頷く。 (いや、別に、悪い事をしている訳じゃないし。皆と一緒に行くわけだし…二人きりじゃないし……彰も行っていいって言っているわけだし……) 自分に言い訳をする俺。 別に後ろめたい事は何もない。 はず。 なのに。 何故、彰に対してこんなにも後ろめたいんだろう。 (…浮気をする訳じゃないし)
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