昨日の日常、モノローグのふたり

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-土曜日のわりに映画館は空いていた。 最初は横に座っている治朗を気にして緊張していたが、映画を見ている内に…前から見たかった映画という事もあり…次第に映画に集中し始め、見入ってしまい…治朗の事を忘れていた。 思い出したのは、下半身に違和感を感じてから…。 「…な…っ!!」 「…駄目じゃない、大声出しちゃ。いくら人が少ないとはいっても…客は居るんだから」 開いた口を治朗の手に塞がれ、耳元に口を近付けた治朗に囁かれてゾクリとした。 「…じゃ、この手を退けろ…!!」 俺も小声で言い返しながら、俺は両手で俺のズボンの上から股間を片手で揉んでいる治朗の手を外そうとした。 「…退けていいの?…もう既に半分勃ってるんですけど?」 治朗の手を退けようと両手に力を入れるが、治朗の手はどういうわけか、ビクともしない。 「いいじゃん。もう半分、勃っちゃってるんだし…窮屈だろ?楽になっちゃえよ…どうする?トイレ、行く?」 -楽に…。 その言葉に一瞬、治朗の手を退けようとしていた俺の手から力が脱けそうになるが…すぐ我に返る。 「ふざけんな…止めろって…」 だが、その一瞬で治朗の手はズボンのチャックを下ろし、その隙間からスルリと中へ入り、直に俺のペニスをやんわりと握り込んでしまった。 なんたる早技。 俺はそれだけで、全身の熱が下半身に集まってしまう。 (ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ) 「…ちょっ…待って待って…タンマタンマタンマ」 慌てて治朗の手首を、両手で強く掴む。 「…何、タンマって…ウケるんですけど」 クスクス笑う治朗。 その間にも治朗は俺のペニスをやわやわと揉む手を止めない。 (…静まれ…俺の息子…!!) 俺の願いと意志に反して立ち上がる、意志薄弱な俺のペニス。 (…何てこった!!…反抗期か…!!) 最早考えている事も、支離滅裂。 半分絶望的な気分になりながらも、治朗の手を俺の息子から外そうと手に力を込め、身体を捩る。 …ここが映画館なのも忘れていた。 「あまりバタバタ動くと、皆の注目が集まるよ…そうなると困るんじゃない?」 (…皆の注目が集まる…) ドキンと心臓が跳ねた。 暗いとはいえ、流石に注目されると俺達が何をしているか分かってしまうだろう。 …治朗にズボンのチャックから手を入れられ、股間を揉まれている俺の姿が…皆に……。 頭の中にそんな俺の姿を想像した途端。 一気に下半身に熱が集まり、爆ぜた。 あっという間の出来事。 「……………あ……………」 あまりに一瞬の内だったので、俺自身何が起こったのかわからず呆然としてしまう。 治朗の押し殺した笑い声で我に返った。 と、同時に羞恥の為に顔が赤くなる。 (………最悪……) 俺は唇を噛み締め、俯く。 「…トイレへ行った方がいいんじゃない?気持ち悪いでしょ?」 治朗の楽しそうな声。 口惜しさに唇を噛み締めたまま、頷く事しかできない俺。 -その瞬間。 俯いた俺の目の端で。 治朗の唇の両端が持ち上がった。 …ように見えた。
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