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僕は師匠の話を聞いて、違和感を覚えた。嘘を言っている? どちらかと言えば、何かを隠してるような。
大量の余計な情報を挟んで、真実を隠しているような。
まあ聞いたところで教えてくれはしないだろう。いずれ真実を知るときが来るだろう。それが、師匠の口から聞けたらいいな。
それだけの信用を得なくては。
「それじゃあ、俺は帰る。」
そう言って扉の前に立って、あ、と思い出したようで、
「そうだった。お前らエルフに会わないようにな。」
「何故に?」
「どうやら天使の技術を活用しようとして、天使に繋がる物を探してる。天使であるお前は最高の物ってことだ。」
僕は、
「今日の来賓がエルフで、探しに来たんですか?」
「そうだけど?」
「じゃあ、兄貴のことがバレているんじゃないですか? 当たりをつけて来たのでは。そうじゃなきゃ、わざわざリスクをおかして悪魔の国にくる理由がない。」
「ああ、奴ら、天使の代わりにエクスカリバーを研究して糸口を見つけようとしてる。」
エクスカリバーは天使の代わりになるのか。エクスカリバーで天使の羽を斬り落としているからか。天使より、高位か同等の神器だと証明されているからだろうか?
やっぱり人の研究って難しいな。
「ていうか、エクスカリバーそれまでに見つけなきゃいけないものだったのでは?」
「別に気にしなくて良いよ。」
「師匠にとって、あれは愛刀でしょ。良いんですか?」
「あれは、玉藻を仕留めるために必要だったけで愛着はない。それに、あの剣は不純な者が手にすれば、そいつは剣に殺されるんだよ。」
「だから悪魔にしか扱えない武器。だからっと言って、放置すれば、犠牲者が増えてくだけですよ。」
「だからと言って、前探したとき見つからなかっただろ。あの剣は誰かが持たなければ、ただの金属の棒だからな。怪盗に盗られた時点で俺たちじゃ見つけられない。」
師匠は少し呆れたように、
「お前たちもあの剣を欲しがるな。生物を滅ぼすためだけに存在する邪悪な剣だぞ。」
僕たちが人の武器である、剣を振るい練習しているのは、エクスカリバーを継承するためだった。
「でも誰かが手にして、誰かが使わなければならない。そういうものでしょ。」
「あの剣だけはダメだ。」
「師匠は使っていたのでしょう。力を得るために。僕も力がほしい。」
「ダメだ。」
「何で。」
「善意を求めているからだ。」
わけ分かんない、ちゃんと説明して、と言おうとしたが喉の奥で引っ掛かった。
師匠が辛そうな表情のせいで、言えなかった。
沈黙がながれて僕はこの空気を変えようと、話題探した。
どうして、追求をやめて話題を変えようとしたのか。自分でもよく分かっていなかった。
喧嘩してはいけない。という意識があるが、どうして喧嘩してはいけないのかが分からなかった。
まだその感情の消化の仕方知らなかった。
ふと思い出した。
「そうだ! 忘れてた。まだ死んでないですよね、彼。」
「彼?」
「ほら、僕らが捕まえた怪盗。最後まで口を割らなかった獣人種。」
「ああ、そんなやつもいたな。それで?」
「餅は餅屋っていうじゃないですか。怪盗が
どうやって盗んで、どうやって隠すのか。専門家に聞けば良いんですよ。」
兄貴がようやく立ち直ったようで、
「じゃあ、さっそく牢獄へ行くか。」
「ちょっと待って下さい。」
「どうした?」
「準備ですよ。交渉しに行くんだから。それに、悪魔にそんな簡単に情報をくれると思いますか?」
兄貴と師匠が口をそろえて、
「全然。」
「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。もしかしたら、成功する可能性があるんですよ。」
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