悪魔の戦闘

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 僕は獣人の前を歩いた。遠くの城を横目に進んでいく。とりあえず待ち合わせ場所を目指す。他の悪魔に見つからないように遠回りをしていた。  昔天使が住んでいようと、日差しの通らない薄暗く不気味な雰囲気は魔王城として風格があった。 「本当にすまなかった。」 「もう何回目だ。気にしてないって。重大なケガをしたわけじゃないんだし。」 「あいつが殺されたと思うと冷静さを欠いてしまう。」 「二人とも仲が良いんだね。」 「ああ、兄弟みたいなものだよ。互いに孤児で、ある人に育てられてさ。一緒に暮らして俺たちは平和を望んだ。」 「何で? 獣人種と人間は一緒にいても問題ないだろ。」 「もう一人、エルフの兄弟にいた。どういう風に俺たちがあの人に選ばれたのかわからないが、エルフ、獣人種、人間の三人の子供が集められた。  名前は……すまないが言えないんだが、エルフの奴はまさかの王族だった。それで連れていかれた。向こうからしてみれば、連れ戻しに来たんだろうがな。」 「そのエルフを取り返したいの?」 「まあそんな感じだ。懐かしいな、アルと一緒にいる時は、あいつの話はタブーになっちゃたからな。」 「これが人の友情か。羨ましいな。」 「ていうか、悪魔って一つの感情から生まれてくるんだろ。お前は感情豊かに見えるが何の悪魔なんだ?」 「好奇心の悪魔。」 「好奇心の悪魔ってことは、好奇心しか持てないんだよな。当たり前だけど。  羨ましいって感情だろ? 持てるのか。」 「まあね。悪魔も日々進化してるんだよ。悪魔には理性がある。一度そこで受け止めて、僕だったら好奇心に帰結させる。  例えをするなら、人の胃袋みたいな感じかな。食べたものって胃袋で消化され栄養を取り出すでしょ。  羨ましい、どうして、僕にはないから、どうしてないのか、どうすれば出来るのか。っていう具合。」 「それは好奇心なのか?」 「感情って物質だよ。その法則に乗っ取って僕達は存在している。有名でしょ、感情粒子論って。人間の書物にあった。」 「その考えかたは知らないな。人間の思想って割りと突飛なものがあるが、いや、確かに、そうすれば、悪魔側から戦争をしかなくても、人に癒着しなくとも生き残れるて、さらに……」  突然、距離を取り構えた。獣人は戦闘態勢というより、撤退、逃げようとしている。  兄貴の声が聞こえた。 「悪魔の国で警戒心を保ち続けているのは評価出来る。悪魔はしょせん悪魔。俺たち見たいのは珍しいからな。」 「兄貴、ごめん、思ってたより時間かかちゃった。あれ、師匠?」 「用があるって帰った。」  兄貴は僕の頭を触って、 「何をされた?」 「気が動転しただけで、敵対するきはないようだよ。」 「ならいいが。」  僕は獣人に、 「じゃあ、あの日最後、どこで師匠を見たのか、案内して。」   「本当にバフォメットには会えないのか。」  兄貴はほんの少し威圧をかけるように、 「諦めろ。自分の立場を考えろ。今こうして出歩けるだけでも感謝しろ。」  威圧に気圧され、こっちだ、と悔しそうに、僕らの前を歩いていく。  その間誰一人喋らなかった。口を開いてはいけないような空気になっていた。兄貴の叱責を僕がやっておけば、こんな感じにはならなかったかな。  城壁をバレないように抜けて、少し歩いて、森の中央、洞窟があった。獣人は思案するような表情を浮かべた。 「ここだ。バフォメットを見失った。」 「洞窟の中に入っていったのかな。」  中を覗くと、徐々に下に向かっているようだった。床はだいぶ平らで、自然のものではなく、誰かいたような後も残っている。 「俺がバフォメットを追ってきたときは、こんな洞窟なかったぞ。」  兄貴は、 「お前が場所を間違えたんじゃないのか。」 「それはない。俺たちは歩幅や方向感覚がずれないように、訓練を受けてる。怪盗には必須科目なんだよ。」 「じゃあお前が捕まっている間に掘られた訳か。」  僕は、 「洞窟に関しては後にして、バフォメットはどこの方角に行ったか分かる?」 「ここに着地したのは見えたが、周囲を探そうとして、お前たちに捕まったんだ。」  鈍重な音が洞窟内部から微かに響く。 「ねえ、これって銃声ってやつだよね。」  だいぶ距離があるようだった。昔聞いたことのある銃声はもっと大きな音だった。  兄貴が、 「行くぞ。」
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