彼女の隣に夢を見る

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その場所に着くと、春の強い風に吹かれて、若干の肌寒さを感じた。春になったといえども、未だ気温は中々安定せず、今日も気温は10度を、少し上回ったぐらいであった。 さて、そんな外気温の中、のほほんと寝そべっている男の姿が目の前にあった。 池谷(いけたに) (むつ)だ。 「よう池谷。やっぱりここにいたか」 「ん?なんだ泡瀬か、何の用だ?」 池谷は、俺を見てめんどくさそうに起き上がると、大きく欠伸をした。 「お前、何枚ぐらい集まった?」 「何枚?あーこれのことか?」 池谷は興味なさそうに自分の胸ポケットからカードケースを取り出して、俺の方に投げる。 カードケースを開けてみると、20枚ぐらいのカードがギッシリと詰まっていた。 「流石モテる男は違うねぇ」 「なんかいつの間にか、机の中に入ってたな。何人かは直接渡してきたが」 「うわっ、二大アイドル含めほぼ女子全員のカードが一枚づつあるじゃねぇか」 「正直、俺はどうでもいいんだけどな。てか二大アイドルってなんだよ」 「お前、モテるのに本当にそういう所疎いな。いいか二大アイドルというのはだな。才色兼備、いつでもクールな所が魅力な黒髪ロング生徒会長の河内野(かわちの)里奈(りな)と誰にでも優しいみんなの母親的な存在の冴木(さえき)結海(ゆうみ)の事だ」 「あーあいつらの事か。まぁどうでもいいな」 「お前は小山内(おさない)の事しか興味ないもんな」 「別に小山内がどうとか言うわけじゃないが、お前含め3人幼馴染として過ごしてきたから、他の奴らよりは気になるさ」 「ただ、残念ながら、お前の持っているカードの中には小山内のカードはない」 俺がそう言うと、池谷は不機嫌そうに眉を潜めた。 「何が言いたいんだよ」 「簡単な話だ。トレードしよう、俺は小山内のカードを出す」 「なっ……!?」 「まぁ、これは最初に俺に配布されたカードだ。小山内から直接貰ったわけじゃないが、お前は一番このカードが欲しいだろ?」 「……なるほどな。まぁ、いいぜ。小山内のカードもらえれば、俺の持ってる女子のカード全員分持っていっても構わない」 「交渉成立だ。じゃあ、これが小山内のカードな」 「確かに受け取った。俺のカードは勝手に持っていってくれ」 「おう」 そう言って、池谷のカードケースから池谷自身のカード4枚を除いた全てのカードを抜き出して、カードケースを返す。 「それにしてもお前は、誰狙いなんだ?」 「そりゃあ河内野さ。冴木も可愛いがなんだかんだいって河内野が一番人気だしな」 「河内野か……でも、競争率高いだろ?相野(あいの)も狙ってるって言ってたぞ」 「でも、だからこそ面白いんじゃないか。確かに相野は強敵だが、出し抜く術は考えてある」 俺は、すっかり分厚くなった自分のカードケースを振りながら池谷に別れを告げて、その場を後にした。
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